仲間とたった一人。
vol. 26 2015-04-06 0
私はサリンガスの被害者だけれど、被害者団体の一員として動いていない。
実際、どの被害者団体にも属していない。
被害者の会に入れてくれと電話したら、「大した活動してませんから」と断られたことがある。
リカバリーサポートセンターは検診をするところだ、という理事長の言葉を聞いて行かなくなった。
現野党の政治家に陳情するとすぐに取り合ってくれたが、「和が大切だから」とリカバリーサポートセンターで潰された。
労組や弁護士のグループに支持母体があるわけでも、勤務していた会社が応援してくれているわけでもない。
宗教団体に属することも拒否している、そもそも、信仰なんかない、
高橋克也の傍聴だって、一度は検察に断られたのを、怒鳴りまくって、頼み込んだ。
もし、傍聴させてもらえないのなら、「傍聴させてもらえない被害者」と書いたプラカードを持って、裁判所の前に毎日、座り込むつもりだったし、検事にはそう怒鳴った。
今回の被害者参加は妹さんが重篤な方と後、二人のサリン被害者だった。
直接のサリン被害者は、結審の日に数えてみると、9人中、たった二人、私がいなかったらたった一人。
サリンを吸った被害者は7000人、彼らは毎日、「忘れるしかない」と言い聞かせて、後遺症を抱えたまま生きている。
現与党の代議士に陳情すると、「団体から上げてもらわないと」と他人ごとだったことがあるが、後遺症を引きずったまま、選挙の運動員をすると、状況がわかったらしく、真っ青になっていた。それでも、何かをしてくれるわけではない。
腰の骨を折って、入院した時、「それなら、私は意見を無視されないところにたどり着いて、意見を言おうじゃないか」と決心した。
「一ヶ月、サリンの被害者と時間を過ごした人はいますか?」と司法記者クラブで私は問いかけた。
そろそろ三カ月前のことになる。
「どんな症状ですか?」と聞いて、そのまま記事にする、そんな人ばかりで、「最近、被害者に密着を開始しました」というジャーナリストは一人もいない、間違っていたら、教えて欲しいのだけれど、ただの一人もいないのである。
私は荒木浩にインタビューしている間、目を閉じていることもしばしばで、話を聞きながら、寝落ちしてしまったこともあった。
私は、最初、たった一人で闘っているつもりでいたが、それは間違いだと撮影が始まって、すぐに気付いた。
何か利益を共有しているわけでも、属性が同じわけでもなく、この映画を作らせたい、作りたい、そういう撮影クルー、そして、このサイトで応援してくれる仲間に支えられているのだと、気付いた。
もう少し、仲間が必要です。皆さん、よろしくお願いします。
さかはら あつし