生命の始まりから浄化の日まで~ホピ物語~のこと
vol. 4 2021-04-08 0
写真:新装『生命の始まりから浄化の日まで~ホピ物語』イメージ
スタートから1週間が経ちました。
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さて、今日は、映画『ホピの予言』のスーパーバイザーであり、リターン品のひとつ『生命の始まりから浄化の日まで』の翻訳者、北山耕平さんの文章をご紹介します。1999年に記してくださいました。
映画のラストに流れる『ホピ平和宣言』の訳者でもあります。
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『生命の始まりから浄化の日』のこと
北山 耕平 1999.9.20記
「まず最初に祈りをあげなくてはならない。
母なる地球と、父なる太陽と、
世界の四つの方角に、捧げる祈りをあげることだ。
そして、その祈りのなかで、
われわれを導いてくださるすべての力を、呼び寄せ る。
なぜなら、これからわれわれは、
幾多の困難と
遭遇しなくてはならないからだ。」
ホピのエルダーで、先年(※1990年)天寿を全うされ、地球における旅を終えたトーマス・バニヤッカが遺してくれた言葉のひとつです。ネイティブ・ピープルのほとんどすべての部族の長老たちが、自らの部族に伝わる予言に基づいて、西洋文明の危うさと、それが引き起こしつつある地球の生態学的な死にたいする警告を発し続けています。
ホピ族は、北米大陸でもっとも辺鄙な砂漠の奥のメサと呼ばれる高原台地で暮らしており、その歴史の長さと、精神性の純粋さにおいて、すべてのアメリカ・インディアンの諸部族から一目置かれている一族です。第二次世界大戦が終結するまで、彼らは自分たちの一族に伝わる予言や教えを外部に公開することはまったくありませんでしたが、ホピの土地から採取されたウラニウムによって核の時代がはじまり、ヒロシマ、ナガサキ以降、時代が大きく変化しつつあることを認識してからは、積極的にその教えをメッセンジャーに託して世界に伝え始めました。
トーマス・バニヤッカは、長老たちによって選ばれた四人のメッセンジャーのひとりで、国連や世界宗教者会議などで教えを説き続けて生涯を終えています。『ホピ平和宣言』には、彼が一生をとおして伝えたかったことのエッセンスが凝縮されています。
ホピ族はアメリカ先住民の中で最古の一族とされています。地球がはじまって、今のこの世界に人間が到達してから今日までの歴史を、口頭伝承で守り続けています。普通は「太陽信仰に基づく平和を愛する人たち」と認識されていて、それはそれで間違いはないのですが、反面「伝統を守るためには、分裂もいとわない」強固な意志の持ち主たちでもあります。
ホピ族は現在いくつかの村に分かれて暮らしていますが、最もラディカルな、超・保守の人たちが常に一番新しい村を興して移り住んできました。外部者にはともすると、古い村の方が伝統的だと思われがちですが、ホピの場合は、一番新しい村に暮らしている人たちが最も伝統的な人たちなのです。
だからこそ、一番新しい村にはガスも水道も電気もなく、太古さながらの、数千年来続けらた質素な生活を守り通すわずかな人たち暮らしています。
『ホピの予言』は、おそらくこの地球で、巨大組織宗教の影響をまったく受けていない、最も古い教えのひとつだと思われます。
俗に『ホピの予言』といわれるものには、いくつかのバージョンが存在します。作家で新聞記者のフランク・ウォーターズが『ホピの書』(THE BOOK OF HOPI)の中で公開したものが一般的には知られているようですし、この本の部分的な翻訳が、日本でも書籍として売られているようですが、彼の情報源は、早い時期に分裂をして新しい暮らしを取り入れることにした「保守とは名ばかりの革新的な」ホピの人びとで、だからこそ「決して売ってはならない教えを売り物にした」と、伝統派からは非難されています。
今回ここで紹介する『ホピの予言ー生命の始まりから浄化の日までー』は、そうしたホピの中でも、最も伝統的な一族が守り続けているバージョンです。
地球の生態学的な危機が叫ばれて久しいですが、ネイティブ・ピープルにとっては環境というのは、そこに暮らす人たちの精神の投影だと認識されています。われわれの心が汚れると、われわれの環境が汚れるのです。地球規模の環境危機は、地球規模の人間の精神の危機でもあります。
ホピの人たちは、太古より一族に伝わる教えを通して、わたしたちの関心を、地球と人間の精神の関係にむけようとしているのです。
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※北山耕平氏は、映画『ホピの予言』監督宮田雪から依頼を受け、『 FROM THE BEGINING OF LIFE TO THE DAY OF PURIFICATION 』を1986年に翻訳する。https://www.shipsltd.co.jp/shipsmag/things/2016winter-17876/
※いちばん新しい「伝統派の最後の砦」ホテビラ村にも、現在は電気が通っており、貯水タンクが建っている。
※「ホピ平和宣言」
https://www.landandlife.org/.../%E3%83%9B%E3%83%94%E5%B9.../