「火づくり」制作レポート(2019年5月号)
vol. 31 2019-05-27 0
皆さん、こんにちは。「火づくり」の監督の松浦です。
令和元年を迎えた、2019年の5月も、もうすぐ終わりそうですね。
東京は日中の気温も上がってきて、昨日は、今年に入って初めて、
部屋の冷房をつけました(笑)
皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
「火づくり」は、順調に制作を進行中です!
作業が止まってしまっていたカットも、新しくスタッフとして
手伝うことになってくれた友人が引き受けてくれたりして、光明が見えてきています。
まだお名前は伏せておきますが、本当にありがとう!
その中の一人は、支援者でもあるクリエイター仲間で、気がついていれば、
このメッセージも読んでくれていると思います。
○○くん!いつもありがとう!(笑)またお茶しようね。
不定期で作品にまつわる小噺を書いてきました。
今日は、「コングレス未来学会議」という映画の感想と、この作品が
「火づくり」に与えた影響について、書いてみたいと思います。
ネタバレを含む話になると思うので、未見の方、予めご了承ください。
作品の存在を知ったのは、友人との会話から。
監督のアリ・フォルマンさんは、「戦場でワルツを」という作品で
名前だけ知っていた、という程度でした。
友人に教えてもらったあと、まだギリギリ映画館で上映している期間でして、
何とか劇場で鑑賞することができました。
いやぁ、この映画は、「皮肉っぷり」が本当に良いです(笑)
褒め言葉です。
科学技術が発達した近未来の話で、「エンターテイメント体験」が
「みんなで薬を飲んで幻覚を楽しむ」という次元にいっちゃってるんです。
映画の前半は実写なのですが、「薬を飲んで見える世界が変わる」という
状態になったら、画面の全部がヌルヌル動くアニメーションになるんですね。
アニメーションという手法を使って、アニメーション自体を批評する、という、、、
このメタ構造はサイコーにクールですね。
イスラエルとフランスの合作、という点から、「アンチハリウッドだ」
といった文脈で論じることもできますが、そういった論評は専門の方々に
お願いするとします(笑)
僕が思ったのは、「これはあくまでフィクションだけど、今の自分たちも
ほとんど同じようなものだなぁ・・・」という感想です。
常にネットに繋がって、買い物をするにも、電車の時間を調べるにも、
スマホが手放せない、、、
初めて行く場所の時は、Googleマップに頼っているし、居酒屋を探す時も
食べログのレビューをしっかり読み込むし、、、
自分で思考して選択したんだ!という意識があっても、実はネット上の
ビッグデータの中の演算に導かれている、なんてことが当たり前になってきました。
どこまでが「自分」で、どこからが「自分以外」なのか、もう分かんないですよね。
それが当たり前で、一度テクノロジーを受け入れた生活を享受すれば、殆どの場合、
状況は不可逆ですし、自分に危害を与えない限りは排除したり、批判したりすることなんて
ありません。(少なくとも今のところは、、、)
「火づくり」の世界でも、主人公と主人公が暮らす街は同じような関係性にあります。
技術が発達して人間の負担を減らす、より快適・便利になっていって、効率化していく、、、
でも、そんな風に便利なだけ、効率が良い方だけに流れていって、
失ってしまうものもあるんじゃないか、、、
そんな疑問は、作品を作り始める前から、うっすらと持っていました。
佐助さんの鋏と出会った時、普段の自分が享受しているテクノロジーとは
全く異質の「テクノロジーの力学」を感じました。
言葉では上手く説明できないので、こればっかりは皆さんにも実際の鋏を手にとって
頂きたいのですけれど、、、
ずしっと重い、あの黒々とした形と、美しい切れ味、、、
その鋏と、自分の体が感じた「感触」は、間違いなく「僕だけのモノ」です。
デジタルにも、数字にも、置き換えられない「感覚」。
「あ、コレだ・・・!」と思いました。
「コングレス未来学会議」の主人公が、物語の最後に再会する「アレ」ですね。
(敢えて解説しないので、未見の方は是非ご鑑賞を・・・笑)
自分の周りの世界や人々や景色が、どれだけ変化・変容しようとも、唯一無二、
「不変」であり続けるモノ。
大げさに言ってしまえば、それは人間が人間たり得る最後の砦のような気がします。
なので、できることならば、今、僕たちの周囲で進んでいるテクノロジーの進化や
発展も、その「最後の砦」を肯定し、あるいは支え、時には補完する方向に進んで
いってほしいと願っています。
それを見誤ると、それこそ「マトリックス」の世界で描かれているような
「機械の奴隷」に成り下がってしまう、、、
そういう危機感も、作品を作り続けたい、と思う動機の一つです。
・・・
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
まだ発表はできないのですが、「火づくり」の後に作ることになりそうな
作品も決まりそうです。これはとある漫画が原作なのですが、今回書いた話が
少なからず関わってくるネタです。
兎にも角にもまずは「火づくり」をしっかり完成させて、その後に、皆さんにも
僕の創作活動としてきちんと報告できるように頑張ってますので、どうかご期待下さい。
いつもご声援をくださり、ありがとうございます。
皆様から頂いた支援金は、日々の制作の費用として、大切に使わせて頂いています。
完成まで、今しばらくお時間を頂いてしまいますが、今後とも、
短篇アニメーション「火づくり」を、どうぞよろしくお願い致します。
「火づくり」監督/松浦直紀