ロゴと家紋のデザイン
vol. 13 2022-07-25 0
今日は、本作品のロゴデザインと紋のデザインを担当したWhateverの高谷(a.k.a.ジャガー)に話を聞いてみました!
今回のロゴは、漢字一文字で「左」。
「アクション時代劇」なので、潔いなかにも「動き」や「力強さ」みたいなものが必要で、ロゴというよりもビジュアル要素が強めな感じがよさそうだと感じました。
まずは「左」を書いてみることにしました。iPadの「Zen Brush」というAppは設定次第で、墨の「にじみ」や「かすれ」を作れるので、慣れれば習字っぽく書くことができるので、今回はこのアプリを使用しました。しかし、一文字かつ画数の少ないシンプルな漢字からにじみ出る、ごまかしがきかない感...。分かってはいましたが、一発でばっちり!というわけにはなかなかいかないので、かすれすぎたところやうまく伸びなかったハネなどの上からもう一回書いたり、太くなりすぎたところを消したり、書いたり、消したりし、61筆入魂しました。
書のことを深く知っているわけではないですが、デザイン的な視点でいうと、右端の筆終わりを極端に下げて正しい字としてのバランスを崩しながら、全体にシンメトリー感を出すことで、その崩れたバランスを中和するように作っています。
墨の書きっぱなし感をそのまま残すのも悪くないかなと思ったのですが、デジタルで書いたこともあり、ちょっと生っぽいかなと感じ、今回のストップモーションでも大事にしている「クラフト感」を出すために、テクスチャを乗せていくことにしました。筆が止まって墨溜まりができそうな箇所には強くひび割れを入れたりなど、筆運びをイメージしながらテクスチャを乗せていきます。
こうしてロゴができました!「力強さ」「躍動感」「クラフト感」など、イメージしていた世界観を表現できた気がします。
ロゴデザインが落ち着いたタイミングで、次は「左甚五郎の家紋」をデザインすることになりました。
左甚五郎だし「左」という紋がいいんじゃないの?という案もあったのですが、あくまで「左」とは第三者からの呼称であって、自分で名乗るものではない、ということから、甚五郎にふさわしい紋を考える必要がありました。
まずは、既に存在する家紋の中から、左甚五郎の成り立ちや背景に当てはまるものはないかなと思い、家紋の本を購入したり、ネットで情報を検索するところからはじめましたが、最終的にはオリジナルの紋を考える方向にシフトしました。とはいえ、完全オリジナルだとそこに家紋としての説得力が無くなってしまう気がしたので、「筋違紋(すじちがいもん)」という実在する紋をベースに、彫刻職人であった左甚五郎の道具「ノミ」を使って表現した「筋違紋・鑿(すじちがいもん・のみ)」というオリジナル紋を考えました。
筋違紋の元来の意味は「家や城を守る」らしいのですが、今回の作品における左甚五郎の生き方ともマッチするのではないかと思い、ベースの家紋として選んだ次第です。
※「犬丸」という憎たらしい敵役も登場するのですが、そいつが背負う紋などもデザインしたりしてます。こちらも、「丸に大の字」という実際に存在した紋をベースに、「大」の字に”点”をつけて「犬」にしています。「犬丸」ですしね。
また、当時の法被は、裾に「角字」なるものを入れるのが主流だったそうです。角字というのは「正方形の中で、水平・垂直のラインのみで漢字を表現した日本古来のグラフィックアート」だそう。
もちろん角字を作ったことなどないので、色々と調べてみたところ、どうやら作るための「指南書」のようなものはありつつも、その通りに作ったからといって全てが美しくなるわけではないようで。そこはデザイナーの腕の見せどころのようです。。
試行錯誤して作ってみたのがこちら。縦読みで「大工」と書いて、それを並べて配置することでパターン化しています。素直に「大」「工」を角字化すると間延び感があったので、その正しさよりも一つのかたまりとしての美しさを優先しながら作成しました。
その後、現場からこちらの写真が送られてきました。
平面上で見ていたデータよりもぐっと締まった印象。そして、印刷だと思っていたらなんと手描きなんだそう。どこまでも職人で、すごくリスペクト。いやあテンションがあがります。飲めないお酒も飲みたくなりました。(笑)