動物の命の重さ
vol. 2 2015-09-15 0
私は大震災で被災した野馬追を取材しているうちに、この被ばく牛を保護する農家さんに出会いました。特に希望の牧場の吉沢さんは強烈でした。東京農大で学生委員長をやっていただけに、あの演説はまねできません。吉沢さんは、悲惨な原発事故で自分の眠っていた心にスイッチが入ったと話されていました。そんな吉沢さんはこのドキュメンタリーでの重要なキャラクターの一人です。
でも私自身は、生きとし生けるものへの命の重さをテーマとしたドキュメンタリーを作りたいと考えています。この考えはブータンに行って影響を受けました。敬虔なチベット仏教徒であるブータン人は、動物を殺すことを極端に嫌います。ハエや蚊さえも・・・です。絶対に殺すことはないとは言えませんが、ブータン人は命あるものを大切にします。そのおかげで、街中には野良犬がうようよいます。命あるものは、姿かたちを変えて、生まれ変わる。この輪廻転生の思想を信じているからなのですが、昔の日本の仏教もその教えに近いものがありました。
今はどっぷりと西洋文化に慣らされてしまい、生活習慣もすっかり変わってしまいましたが・・・今の我々は肉となった動物たちの命を頂きながら生きているのです。ましてや放射能に汚染されたと言っても、人に直接病気をうつしたり、害を与えるものではありません。人間にとって、役に立たないから殺すという論理は正しいのでしょうか?
これは私自身の心の中への問いでもあります。皆さんはどのように考えるのでしょうか?この映画を通じて、少しでもそんな思いを浮かべていただければ嬉しいです。
松原