コラム14:平家琵琶を弾くのは「曲節」の前奏
vol. 18 2023-09-28 0
皆様こんにちは、鈴木まどかです。
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本日は、平家琵琶はほとんど弾かない、という話です。
琵琶の演奏ときいて、皆さんはどんな音色を想像しますか?
「勇ましく、ベンベーン!とか、バチーン!と弾く」と思っている方は、「薩摩琵琶」というジャンルを想像していることが多いです。
「なんとも言えない哀愁が味わい深い」と思っている方は「筑前琵琶」というジャンルを想像していることが多いです。
そういう方が前情報なしに平曲をきくと、
「この人、琵琶も弾けないのに演奏家を名乗ってるのかしら」
「琵琶を聴きにきたのに、平家物語をブツブツ唱えて終わってしまった」
という感想を持たれるようです。
そうなんです、平家琵琶は「ほとんど琵琶を弾かない」のが特徴です。
語りの旋律形式である「曲節」の前奏として、
これから、こういう内容でこんな声域の語りがありますよ、と示すために弾くだけです。
あとは、語りの途中で決まっているフレーズが少しと、
語りの音程を確認するために単音を鳴らすくらいです。
「祇園精舎」など特別な伝承句を語る時には5分くらいの曲を弾きます。
雅楽における琵琶の独奏曲に由来すると考えられています。
その曲の一部分と、声明(しょうみょう)に由来する語りの旋律形式を対応させ、
旋律形式が変わるときに、それを示す短い前奏曲として弾きます。
この旋律形式を「曲節」と呼びます。
ひとつひとつの句の始まりは、たいてい、説明文の「口説(くどき)」で始まります。
節回しはほとんどなく、状況を説明します。
和歌は「上歌(あげうた)」「下歌(さげうた)」で詠唱します。
景色を描写するときは、中ほどの声域を用いる「中音(ちゅうおん)」や、
高い声域を優美に用いる「三重(さんじゅう)」で語ります。
合戦の場面など人物や事項を列挙するときは「拾(ひろい)」で語ります。
会話文は、節回しを使わない「素声(しらこえ)」で、定められたアクセントで語ります。
それぞれ前奏曲が違いますので、慣れてくると、
「あ、この短い前奏曲は素声だから、次は会話文の場面だな」
「上歌の前奏曲を弾いた。どんな和歌が聴けるのかな」というように、
知らない句でも場面の変化を楽しめるようになります。