コラム13:平家?平曲?平語?
vol. 17 2023-09-27 0
皆様こんにちは、鈴木まどかです。
募集期間は残り2日と2時間を切りました。
あと50時間弱、ご支援・情報拡散をお願い申し上げます。
本日は、平家琵琶(平曲)の呼び方について書きます。
平家琵琶に関する古い文献には、
たとえば公家の日記に「平家を聴く」とか
「(盲人が)平家を語る」という記述がみられ、
正式に「平家」と呼ばれていたことがわかります。
平家物語の一部始終を語るための琵琶は「平家琵琶」、
寺社の修復費用を募る勧進興行は「勧進平家」、
元文年間に編纂された譜本は「平家吟譜」、
安永年間に編纂された譜本は「平家正節」、
明治時代に館山漸之進が著したものは『平家音楽史』です。
ただし、これでは「平家物語」や「平家一門」と紛らわしいということで、
「平語」「平曲」「平吟」などとも呼ばれました。
それぞれ、平家を語る、平家の曲節、平家を吟じる、という意味合いが感じられます。
幕末の記録類をみても、明確に使い分けているということはなく、混在しています。
とはいえ、江戸後期の京都の紳士録『平安人物志』には「平語」という項目があり、
そこに出てくる藤井雪堂が『追増平語偶談』を著しているので、
京都では「平語」と呼ぶことを好んでいたという印象があります。
幕末江戸の記録では、「平家」はもちろん「平吟」も見受けられますが、
「平曲」も散見します。
『平家音楽史』を明治四十三年(1910年)に著した館山漸之進の長兄・楠美晩翠は、
明治十六年(1883年)に『平曲古今譚』『平曲統伝記』『平曲温故集』を著しています。
これらのことから、江戸では「平曲」を使うことを好んでいたという印象を受けます。
なお、全200句を相伝している者の免状には「前田流平家詞曲」と書かれています。
平家物語の詞(コトバ)と曲節、という意味合いです。
正式には「平家」、
免状には「平家詞曲」、
混乱を避けるために「平語」「平曲」「平吟」なども使われており、
地域や時代の好みが反映された可能性がある、というのが私の考えです。