コラム07:薩摩藩主が救った平曲伝承
vol. 8 2023-09-16 0
皆様こんにちは、鈴木まどかです。
本日は、幕末江戸の平曲伝承を救った人物についてお話します。
天保年間初めまでの江戸では、元文二年(1737年)に岡村玄川が編纂した「平家吟譜」を用いて平曲が伝承されていました。
さらに、平曲を修得する盲人も減り、約100句しか伝わっていませんでした。
そこで薩摩藩主の島津斉興・斉彬父子は、当時の江戸で平曲の上手だった「清川勾当」に出資し、天保三年と五年に京都で「平家正節」全句を修得させました。
また勾当から検校にも昇進させました。
清川勾当は「麻岡検校」として江戸に戻り、精力的に弟子を育て、晴眼の平曲家たちにも稽古しました。
島津斉興は平曲の相伝者となりました。
重い扱いの「大秘事」を稽古した折に近習が書き写した譜本は、江戸の晴眼の平曲家たちに密かに流通し、その後の晴眼相伝者誕生を円滑にしました。
つまり斉興・斉彬父子は、江戸における当道座の平曲伝承のみならず、現代まで続く晴眼者の平曲相伝を可能にした、偉大な人物といえます。