『波伝谷に生きる人びと』の舞台を知る⑦~波伝谷の春祈祷~
vol. 24 2015-02-15 0
こんばんは。プロジェクトマネージャーの野村です。
『波伝谷に生きる人びと』の舞台を知る、7回目の今日は波伝谷を挙げて行われる行事、春祈祷についてです。はじめて波伝谷を訪れた監督を魅了したという、その行事とはいったいどういうものだったのでしょうか。
波伝谷で最大の行事といえば、3月の第2日曜日に行われるオススサマ(お獅子様)こと春祈祷です。この行事は本来、釈迦の入滅した日とされる旧暦2月15日に行われていました。春を迎え入れるため村内や家々の悪魔祓いをする行事で、南三陸町の無形民俗文化財です。
この行事は、村に疫病が流行った際、その対策として獅子を持ち込んだのがはじまりと言い伝えられています。この行事には契約講を中心に親興会や波伝谷会も運営に関わり、獅子舞が全戸を回る波伝谷挙げての行事となります。
各家々では、獅子舞一行を迎えるため、その家の主婦が腕によりをかけた個性豊かな料理でもてなします。また子供達も各家を回ることでお菓子などをもらい、部落内の家々の特徴を把握していきます。このように獅子舞を舞う側、それを迎える側はもちろん、大人から子供にいたるまであらゆる世代が主体的に関わるのが波伝谷の春祈祷なのです。
かつて、この獅子舞やお囃子は春祈祷そのものの運営と同じく契約講員のみで行われていました。しかし、契約講員以外の家が増え、また担い手の少子高齢化もあって、現在では講員以外の住民の協力により行われています。また祭日を新暦3月第2日曜日に固定したのも、子供をはじめ参加者が集まりやすいようにする配慮からです。
伝統行事とは一口に言っても、時代に合わせて柔軟に変化しながら現在まで続いてきた春祈祷。人と人との関係が希薄になったと言われる今日でこのような行事が行われていた波伝谷。東日本大震災はその日を目前にして発生しました。しかし、震災を乗り越えて翌年に春祈祷は復活します。その原動力は震災後にではなく震災前からあったのではないでしょうか。そんな波伝谷の春祈祷を取り巻く日常の人間模様は、ぜひスクリーンでご覧ください。
(参考資料『波伝谷の民俗ー宮城県南三陸沿岸の村落における暮らしの諸相ー』)