『波伝谷に生きる人びと』の舞台を知る⑧~人と人とが助け合うユイッコとテツダイ~
vol. 25 2015-02-16 0
こんばんは。プロジェクトマネージャーの野村です。
『波伝谷に生きる人びと』の舞台を知る、8回目の今日は人と人とが助け合うユイッコとテツダイについてご紹介します。
波伝谷の人びとは豊かな海と山の恵みをうまく活用しながら、生活してきたことはこれまでご紹介したとおりです。また人と人とのつながりも春祈祷のような住民総出のお祭り、契約講などといった組織による連帯が生きた部落だったともいえます。契約講などは部落をまとめるとともに講員同士の互助も行いましたが、こうした互助の他、波伝谷では日常の農業や漁業などで労力を貸し借りするユイ(結)やユイッコ(結っこ)と呼ばれる慣行がありました。また類似したものとしてテツダイがあります。
農作業や炭焼き、漁業など人手が必要な作業に際し、主に親類や隣近所、気の合う仲間などを頼んで手伝いをしてもらい、労働してもらった作業を相手の家でも同じく手伝うことによって借りを返すのがユイッコです。ただし、その作業内容によっては相手の家で行っていないこともあり、そのような単純に同じ労働で返せない場合には金品をあてることもありました。
また、テツダイもユイッコと似ていますが、作業の礼には飲食をあてることが多くあります。機会があればユイッコのように労働で返すこともあり、ユイッコとテツダイは厳密に分けられている訳ではなく、ユイッコと同じような作業でもテツダイと呼ばれることもあるようです。
こうした人と人とのつながりは、お祭りという地域、そして契約講のような組織といった枠組みの中だけではなく、作業が機械化されて減ったとはいえ、個人と個人の関係においても手伝い、手伝われる関係が保たれていたのが波伝谷だったといえるのではないでしょうか。それは「人は1人では生きられない」の言葉を現実に体現して続いてきた、かつてのムラの生活の知恵でもあったのです。
(参考資料『波伝谷の民俗ー宮城県南三陸沿岸の村落における暮らしの諸相ー』)
あと数回でこのシリーズも終わりになりますが、もし波伝谷についてご質問やご意見などありましたら遠慮なくご連絡ください。できるだけ、この記事で取り上げさせていただきます。