音楽家の帰る場所
vol. 5 2020-04-10 0
この国の今の音楽の故郷は、狭山、入間、福生、の米軍ハウスだと、そう言っても過言ではないと思います。
その歴史に憧れと敬意を抱き、このハウスで音楽制作を始めました。13年が経ち、僕自身はこのハウスと別れるための心の準備をしています。
自分の意思とは関係なく、このハウスで録音をしたいと集ってくれた沢山の音楽家の皆さんにはとても感謝していますし、僕という音楽家は、ここへ来た皆さんに育てられました。
僕はこのハウスで、心置きなく音楽を作ることができて幸せでした。そして、ここへ来る人たちにもそんな風に音を作ってもらいたいという思いでした。
賃料は入居当時から5万円ほど値上がりしました。最初はシェアハウスとして、ワンルームほどの賃料でしたが、同居人の結婚を機に、本格的な録音スタジオにする決意をし、その後カフェを併設、様々な事業を立ち上げて、維持を試みてきました。
私自身は音楽家としての鍛錬を怠っているつもりはありませんでしたが、実際は音楽と関わる時間が少なかった、そして努力不足だった為に、不甲斐ない成長しかすることができませんでした。
2019年にスタジオ閉鎖を決意し、音楽一筋を誓いましたが、紆余曲折あり運よく現在もスタジオが存続しています。
2020年4月は、再びスタジオを続けるか閉めるかという選択を迫られ、様々な策を試みましたが、コロナウイルスの影響もあり、もう一度自分の想いに忠実にスタジオのことを考えました。
正直、今の僕に、このスタジオはデイリーで必要な物ではありません。
あればもちろんいいのですが、音楽一筋の生活を送りながら、ここの維持管理を賄えるほど世の中は甘くはありません。
今回のクラウドファンディングは、夢物語のような物だとははなから承知ですが、これまでここを訪れてくれた音楽家が、僕も含め、思い出した時に帰れるような故郷にしたいと思うのです。
また、米軍ハウスの音楽文化が今日の日本の音楽の故郷でもあるという事も、その想いに拍車をかけ、ちょっとした使命感にも駆られています。
そして、僕がそれを守り続けるのであれば、その方法は今回思いついた循環が望ましいはず。
また、この場所を守り続ける意味がご理解いただけると嬉しいですが、それを誰かに望むことも違うと思います。
僕は、できる事ならば一人の音楽家としてこの場所と関わりたいです。スタジオオーナーではなく、ここを使う音楽家として。
この夢物語のような循環が始まったら、きっと沢山の音楽家とスタジオを支える支援者の皆が笑顔で繋がれるような気がしていて、ウキウキするのです。
僕も安心してここを離れられるし、また戻ってこれる。
この国の音楽の故郷に、音楽家の帰る場所があったらいいなと思うんです。