guzuri recording house に寄せて・ハナレグミ(永積崇)
vol. 4 2020-04-09 0
【 guzuri recording house へ、ハナレグミの永積崇さんからコメントをいただききました 】
スタジオ 『guzuri』 は埼玉県入間市の古い米軍ハウスが残る一角ジョンソンタウンにあるハウスを改築したスタジオです。
はじめてguzuri でレコーディングしたのはハナレグミのアルバム 『あいのわ』 だったと思う。
どういう経緯で guzuri にたどり着けたのか今ではちょっと思い出せないけど、、その何年か前にアルバム 『帰ってから、歌いたくなってもいいようにとおもったのだ』を自分の家でレコーディングした自分にとっては、よりホームレコーディングをバージョンアップした夢の基地だった。
スタジオの大きな窓の向こうには木々に囲まれたグランドの公園があってその木々の間から西日がまっすぐスタジオに入ってくる景色が、日にあたった板の間の甘い香りがすぐにでも思い出せる!
僕らは持ち込んだ沢山の機材を大きなリビングに全部広げて、片っ端から思いつくアイデアを昼も夜も音にしていった。
ある日の作業ではプロデュサーの大谷くんが熱で寝込む布団の中から、横でミックス作業するエンジニアに『そこもっと音上げて』『もう一回演奏してみよう!』 とか指示していてメンバーの皆で爆笑したりした。
普段利用するスタジオは音だけに集中するために、音楽に関係ないものは全然置かれていないけれど、guzuri にはキッチンもあればダイニングテーブル、ベッドもあったり家主である笹倉くんの愛読書やCDやなんやらが置かれていたり。曲のアレンジの上でも 『あの西日みたいなシンセの音出してみてくれない?』とか『このコップの音入れてみよう!』とか遊び心に事欠かない。
そうそうハナレグミの 『深呼吸』という曲の『見上げた空に飛行機雲 僕はどこへ帰ろうかな』というフレーズは 歌詞を書きに公園に出て見上げた空から拾ってきた言葉だったな。
レコーデイングに煮詰まりそうになるとメンバーが一人また一人、パラパラと見知らぬページをめくる者もくもくとコーヒーを入れ出す者 公園に走りに行く者 と気が向く方向へ散り散りになって、またしばらくすると楽器を一人また一人と手にとってセッションが始まる。
でも今の時代こういう時間のかけ方は無駄に思われているのかな?もしくは贅沢か?
僕にとっては音楽は決められたゴールを目指す場所なんかじゃなくて何か漂う気配を瞬時に掴んでそっと皆の前で 『ほら。。』って開いて見せるようなことなんだ、だから何もない時間が、生み出す前の時間が大切なのだ。
メンバーと時間を気にせず語ったり楽器を弾いたりご飯を食べたり、その合間合間に溢れるヒントをたどって一曲になる、それには場所の力がとても大切だと思う。
気が置けなくて、咄嗟のひらめきにパッと手に届く、録音ボタンが押せるそんなベッドルームの延長のようなスタジオの力が必要だ。
guzuri の存在は僕の音楽を話す上でも大切な場所の一つです。
ハナレグミの音源では 『peace tree』 が特にguzuri の空気を伝えていると思う気の置けない仲間達が夜な夜な集まって悪巧みした感じ。
永遠に残る時間と空気が聞こえてると思うので ぜひ一度その耳で聞いてみてほしいな!
そしてその guzuri を生んだ笹倉くんが何やらまた新たに面白いことを考えたみたいだよ。
この場所や発想を必要としている音楽家や創作家がたくさんいると思います。
その人達にゆっくり 思う存分にguzuriを感じてもらうための企画。
ぜひ たくさんの人に知ってもらえたら嬉しいです!
ハナレグミ(永積 崇)