演技をする醍醐味を味わえた前作 by モーガン役西山友紀
vol. 11 2023-04-23 0
実は私の表現の選択肢に、「お芝居」というのはこれまで存在していませんでした。
数年前、『細雪』の初日舞台にセリフなしエキストラで出させていただいたことはありましたが、そのくらい。
それまで、私という存在を通して何かを表現しようと、『人魚姫』や『雪女』をモチーフにして私が書いたオリジナルの物語を人魚姫や雪女それ自体となって朗読するライブ、また私の解釈での江戸川乱歩の『芋虫』の朗読と舞踏のコラボレーションなど、いろいろなことをしてきましたが、それらは全部、“自分の表現したいことを、表現したいように表現する”ことでした。
それが私にとっての“表現”であったともいえます。
しかし!
お芝居はそうではなかった。
昨年9月の劇団エル初公演『鬼女紅葉伝説』の脚本を読んで、私が「ああ、私が紅葉だったらこう考えるな」と思って台詞を言ってみても、演出が「それ違う」と言えばそれは違うわけで。
これはかなりのストレスでした。
「だって私の考える紅葉はこうだもん」
「私が紅葉だったらこうするもん」
といくら訴えても
「違うんだよね〜」
「違うの!」
と言われ、何度か心が折れそうになったことか。。。
毎日が自分との戦いですよ。
それが、あれは公演の数日前だったでしょうか。
お稽古中、
あ、来た(=紅葉が降りてきた)
と思った瞬間があったのです。
「紅葉鬼女伝説〜過去から未来や愛は千年の時を超えて〜」
霊的にどうのこうのではなく、多分あれは、脚本演出が表現したい紅葉像と私の中の紅葉の要素が融合した瞬間。
きっと、演じることが好きな人というのは、この瞬間がたまらないのではないかと思います。
昨年は大切なものを奪われて鬼となった鬼女紅葉を演じましたが、今年は、大切なものを守るために悪魔に魂を売った魔女モーガンを演じます。
「モーガン・ル・フェイ〜大いなる女王」稽古中
紅葉もモーガンもどちらも、聖と邪、白と黒、善と悪、純粋差と邪悪さ、愛と憎しみ、といった相反する両極を持っています。
でもそれって、女性なら誰でも持っていると思いませんか?
今年も、観てくださった方のなかの何かを震わせるような体験を提供できる自分でありたいと思います。
ぜひ、観にきてください。