Toyohashi Fude STORY2/6
vol. 8 2017-08-02 0
STORY2/6として、今回は福筆の原点である豊橋筆の製作過程についてご紹介させていただきます。豊橋筆の製作には約36の工程を費やし、経験豊富な職人が1本1本丁寧に作り上げていきます。さっそくですが、巧みの技をのぞいてみましょう。
選別・毛もみ - SENBETSU / KEMOMI -
豊橋筆に最良な原毛の選別を行い、毛もみを作業を行ないます。もみ殻の灰を選別した毛にまぶしてから作業が始まります。毛もみは、毛から脂を取り除き、墨の吸収を良くするため、鹿皮などで巻いて強くもみます。ツルツルした手触りが脂分が抜けてキシキシした感じなるまで何度も繰り返します。使い手の顔を思い浮かべて何十回、何百回と同じ作業を繰り返します。
さらい - SARAI -
豊橋筆のこだわり作業とも言える「さらい」。原毛の中には、何らかの理由で毛先が切れなくなっている毛があるので、それを一本一本取り除いていきます。片手で持てるほどの束の中から、一本を見つけ、抜き出す技は、まさに修練の賜物。さらいの作業は、工程の中で、何度も繰り返し徹底的に行なわれます。一切の妥協を許されない姿勢が豊橋筆を高級品といわしめる根拠だと言えるでしょう。
ときだし(櫛上げ)- TOKIDASHI -
さらいを終えた毛を湯で煮出して、水で湿らせた後、手で持てるくらいの束に分けます。それを毛がからみあったり折れ曲がったりしないように金櫛でたんねんにすき、「はんさし」使ってガラス板の上で整えていきます。毛は、適度な水分によって軽くくっつきあい、板状になります。作業は、右手にはんさしと金櫛を、左手に毛束を持ち、素早く進められ、その手技の美しさに思わず見とれてしまいます。
寸切り - SUNGIRI -
ここで初めて、毛にはさみを入れます。穂先の寸法を決める分板という道具で長さを測り、毛の根元を切り落とします。分板は、0.7~1.5mm間隔ぐらいで並び、太い筆ならこのうち二十数枚を使うなど、筆によって組み合わせて使います。使う板をすべて重ねて持つと筆のかたちになるのが面白い。
型作り、練りまぜ - Katadukuri / Nerimaze -
選別後、別々に加工されてきた芯毛をガラス版の上に並べて混ぜ、金櫛ですきながら余分な毛をはさで切り、こま型を使って一本分を試し作りします。これで形ができたら、全ての毛を練り混ぜる作業に入ります。はんさしでトントンと折りたたむようにしながら何度も飽きること無く混ぜ合わせ、丹念に練り混ぜていきます。
総練り - SOUNERI -
豊橋筆だけが行なうと言っても良い、練り混ぜの総仕上げの段階です。荒混ぜした毛二束をとり、再度練り合わせて一つにします。つまり、荒練りの工程を二回繰り返すわけです。より均一に毛が混ざるように配慮した「練りまぜ」の総仕上げです。ムラがなくなればそれだけで見た目が美しくなり、水を使うことで墨含みも墨はけもよくなります。豊橋筆の品質の秘密の一つと言えます。
芯立て - SHINTATE -
総練りした毛をはんさしにを用いてとり、こまを使って芯の形に整え、ふのり(海藻で作った天然ののり)をしみ込ませて穂先の形に作ります。現在はふのりを採る人も減っていると言います。姿形を一本ずつチェックし、天日で乾燥させる。かかる時間は、天候にもよりますが一日から二日。仕上がりも間近です。
化粧毛を練り、巻く - KESYOUGE / MAKU -
天日乾燥が終ると、いよいよ穂先の仕上げにかかります。いわば嫁入りの支度の総仕上げというところでしょうか。上毛とも呼ばれる化粧毛(穂先の表面に巻かれる毛)を巻く作業です。今まで芯毛とは別に加工されてきた化粧毛を、芯毛と同様に練り混ぜ、はんさしで薄く引きのばして芯に巻きつけます。化粧毛にはつやのあるきれいな毛が使われ、色は白か茶色が主流。「人は誰でも最初は、見た目から入るので、美しいものほどよく売れる」のだとか。原料は羊毛や馬の胴毛が主ですが、高級なものにはいたちも使われます。
総仕上げ、のりとり - SOUSHIAGE / NORITORI -
いよいよ最期の仕上げの作業です。出荷に向けて、穂先全体にのりをつけていきます。こののり付け作業は、見た目を美しくするために行なう作業で、むらなく満遍なくのりをつけるために穂の根元までしっかりのりを浸透させます。その後、のりを均一にするために糸を口にはさみ、右手でもう片方の糸をもち、左手で筆をもち、丁寧に穂先表面についたのりを落としていきます。
そして、完成を迎えます。
福筆は、これらの伝統的な豊橋筆の工法をコンバートして製作いたします。
次回は、豊橋筆を製作する裏方である道具をご紹介いたします。