7/20 稽古場日誌#5 by青草猫
vol. 24 2020-07-20 0
こんばんは。
初めまして。
青草 猫(あおくさ・ねこ)と申します。
本日は、梅雨の晴れ間でした。
じんわり汗ばむ日差しの中、
若い我々はまったりと稽古に励みます。
劇団FAXさんの公演に出させていただくのは初めてですが、
この空気感がすきだなあ、と思いながら、にこにこ参加させていただいています。
本日は、ワークショップとして、
エチュード(即興劇)を行いました。
演劇をかじっている者には馴染みのある言葉ですが、
普通はあまり馴染まない言葉かもしれません。
その名の通り、筋書きなく、その場で即興で芝居をしていくというものです。
アドリブ力はもちろんのこと、
芝居に必要な、様々な能力を鍛えることができます。
本日は、演出の有働さんいわく
「コミュニケーションを大切にしてほしい」
とのことでした。
コミュニケーション。
日常生活においても、
芝居においても、
本当にとても大切なことです。
だけど、コミュニケーションってなんなのか。
分かっている人、実践できている人は、
実は少ないんじゃないでしょうか。
芝居をするとき、何に気をつけるべきか、いつも考えます。
役者それぞれが、自分の個性をこれでもかと主張し合い、ぶつけ合うような、激しいバトルが求められるときもある。
かと思えば、周囲をよく見て、周囲と調和し、周囲に溶け込む演技を全員が行うべきときもある。
「主張」と「調和」を、場面によって適宜切り替える必要があるときもある。
私は、「主張」が苦手です。
このことはよくよく自覚していて、役者としての弱点だな、とも思います。
反対に、「調和」は、それと比べれば幾分か得意です。
相手がしたい演技を汲み取ること、
そしてそれに合わせることは、
比較的、苦労なく行うことができます。
でも、主張も調和も両方できてこそ、です。
だって、
もしも相手が、「今は主張してきてほしいな」と思っていたとしたら?
私は、その思いを汲み取りながらも、なかなか、それに応えることができないのです。
今日のエチュードでも、
そんな私の良くないところが出てしまいました。
話の流れと役回り的に、
「ここは私が話にオチをつけたほうがいいな…!」と、
私は分かりました。
分かっていたのに、できなかった!
「目立ちたくない」
「見られたくない」
という性分ゆえです。
私がオチをつけたら、
私が目立ってしまう。
オチって大切ですから、
そのオチがつまらなかったとき、
お話全体もつまらなくなってしまう。
そんな重大な責任、取れない……。
目立ちたくない、見られたくない、
調和はできるが、主張ができない。
これらは全て、根っこは同じです。
結局、私は、
怒られることがいやなのです。
失敗がいや。
だから、目立たず、ひっそりしているのです。
誰か、強く輝いている人の影にいれば、
私が目立つこともなく、
失敗しても、私が怒られることはないから。
「そんなに引っ込み思案な人が、どうして演劇なんかしているの?」
と、疑問に思われるかもしれません。
しかし、「引っ込み思案であればこそ」です。
芝居をしている間、私は、「私」として舞台に立たなくていい。
「私以外の誰か」として、舞台に立っていいのです。
それは、私のように引っ込み思案で、自分に自信のない人間には、
本当に、大変、助かることなのです。
「私」でいなくていい。
私は、大嫌いな「私」でいなくていい。
その代わりに、
可愛らしかったり、
一生懸命だったり、
誰かのために泣いたり、
私利私欲のために動いたり、
それで怒られたとしても、
なぜかへっちゃらで生き抜いていく、
そういう「誰か」でいていいのです。
人は、私のことよりも、役のことに関心がある。
私を見られない。
それはとても、居心地のいいことでした。
だけど、今回、演出の有働さんは言います。
「素のままでいいです」
「できる限り、自分の素を出せる方法を考えてください」
「素のまま“で”いいです」
なんて、「ラクなこと」のように仰るけれど、
それは私にとって、大変恐ろしい言葉です。
でも、私は、分かっています。
かつて、自分のブログに書いた一節があります。
──私は、知っています。自分の人間的魅力をそのまま、舞台上に晒せる役者がいることを。
(中略)
彼らの心には嘘がない。
自分の醜さも美しさも、全てを晒して、舞台上に堂々と立っている姿は、本当に、圧倒的に、人間的です。
私もああなりたいなあって、最近、よく思います──
(青草猫 LINEblog 「930字丁度作文『役者のタイプ』」より)
これは、「ああなれる」ためのチャンスなのでしょう。
変わりたいと思ったときが変わりどき、とはよく言いますが、
そこへ、変われるチャンスが降り掛かってきたのならばそれはもう、変わりどきも変わりどき。
変わりどきの極みです。
変われるかな。
いや、やっぱ無理かな。
ちょっと自信なくなってきたな。
いやいや。
いや…いや無理か。
いやいや!できる。
いやいや…無理かな?
いやいや。
いやいや。
うーん。
いや、
前向きに締めるのはちょっと、性に合わなくて……。
すみません。
青草猫