サムのショートエッセイ 「E9について」
vol. 5 2020-06-09 0
生まれたての劇場
劇場には「におい」がある。
僕はこういう「におい」がある劇場を「生きてる劇場」と個人的に呼んでいる。「生きてる劇場」は下見をしたときに、ワクワクしてなんだかたまらなくなるのである。「あんな事をしてみようかな」「こんなことをしてみようかな」とワクワクがとまらないのである。舞台のど真ん中に寝そべって、いつまでもいつまでもそこにいたくなるのである。子供の時に誕生日プレゼントでおもちゃを貰った時の様に、これからの事がたまらなく愛おしく感じるのである。
E9に下見にいったとき感じたのは「無臭」であった。でもワクワクした。これは私にとって初めての経験だった。E9は2019年6月にOPENし、僕が下見をしたときにはまだ誰も使ってなかった。つまり、E9という空間は、まだ「劇場」ではなかったのだ。そんなまだ「まだ何ものでもない空間」の真ん中に立ち、「僕らがこの空間を「劇場」に出来るんだ」と、「僕らがこの空間に「におい」をつけれるんだ」と思った。そんなことを考えると、ゾクゾクした。
今まで子供だった僕のワクワクは、青年のゾクゾクに変わったのだ。
あの下見から1年経ち、ようやく僕等がE9で作品を作れる時が来た。この1年の間に沢山の団体がE9を使用した。E9は今、「どんな「におい」になっているだろうか」「その「におい」にどんな「におい」を付け加えてみようか」。実際にE9に行くのはまだまだ先の事だけども、そんなことを考えてしまうのです。
皆さんも是非、劇場に足を踏み入れる時に、鼻から大きく息を吸ってどんな「におい」がするかを感じてみてほしい。
劇団FAX代表
玉井秀和