【お詫びと訂正】特別装幀版の『デカメロン2020』について&more...
vol. 24 2020-09-25 0
こんにちは。たくさんのご支援と応援をありがとうございます。
クラウドファンディングも残すところ12日となりました。
おかげさまで、目標金額の88%までくることができました。
まずはお詫びと訂正から。ご支援をしてくださった方からの
ご指摘でトップページの紹介文に大きな誤りがあることが発覚しました。
いまのいままで、気づかずにいて申し訳ありません。
想定されるリスクとチャレンジのところに、
誤って下記のように記載しておりました。
誤 『デカメロン2020』は、12月初旬より一般の書店にも並ぶ予定です。ただし一般書店で販売するものは、クラウドファンディングのリターンでお送りするものとは表紙の異なる特別装幀版になります。クラウドファンディングで支援をしてくださった方に限定版『デカメロン2020』を書店販売より先にお届けします。
これでは、書店で販売するものが特別装幀版ということになってしまいます。
もちろん違います。特別装幀版はクラウドファンディングで支援をしてくださった
みなさまだけにお届けする特別なものです。
書店で販売するものはブルーのカバーの通常版です。クラウドファンディング限定の特別装幀版では、ブルーのカバーの上に、もう1枚特別なカバーがつく予定です。特別なカバーというものがどのようなものかは届いてからのお楽しみ。_____________________________________________________________________________
続いては内田洋子さんのインスタグラムからの転載です。
まずは、エリーザさん、ヴァレンティーナさんについての投稿です。
突然、ヴェネツィアに住みにいった。昨日決めて明日発つ、という感じだった。
7年前のことだ。
隣に青果店があり、ジャガイモ1個でも、毎日何かしら買いに訪ねた。
店を切り盛りする3人姉妹の客あしらいが見事で、これぞ商いの手本だ、と思ったからだった。
そこにいた中学生が、エリーザだった。
小さな妹の手を引いて学校へ行く。毎朝走っていく2人は、霧の濃いヴェネツィアでの私の毎日の活力源だった。
今、エリーザは視覚芸術学院に通う。シモーネの後輩だ。
世界各国から受験する人がいるが、毎年度、合格するのは15人しかいない。
宙を浮遊しているようなエリーザは、#デカメロン2020 に毎回まるでアートな文を書いてきた。いつも朝までかかって書いてきた。
眠れなかったのだろう。
ロックダウン前から大型犬を飼うことになっていた。
タロー。
2020年生まれの相棒だ。
ヴァレンティーナ。
#デカメロン2020
と、この速報連載を名付けたのは、ヴェネツィアのジュデッカ島で下宿生活を送る彼女とジュリが、古書店に#デカメロン を買いにいった、と聞いてのことだった。
初めてヴァレンティーナに会ったのは、2019年の夏だった。
働きながら大学に通い、静かで、笑う目で人の話を聞いていた。
ロックダウンの中でもいつも茶目っ気たっぷりの振る舞いで、しかし沈着冷静だった。
彼女がいればだいじょうぶ。
難破して無人島に流されるなら、ヴァレンティーナとならやっていける、
送られてくるメッセージにそう思った。
両親は、東欧から移住してきた。
周りとの距離感の持ち方は絶妙で、どこか達観したところがある。
疫病がなければ、けっしてこのようには知り合うことはできなかっただろう。
内田洋子
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続いても内田洋子さんのインスタグラムからの転載です。『デカメロン2020』と
クラウドファンディングのサイドストーリーとしてお楽しみください。
その1
おはようございます!夜が明ける前に出航。帆を上げ、広げ、たたみ。僅かな風も逃さず拾い集めて、船は行く。舳先は、甲板長の持ち場。
風力風向、速度を船上日誌に記録する。海との交換日記だ。
(20.9.3)
その2
付いてくる。挨拶がてら、貰うものを貰ったら、自分のテリトリーに戻る。海の掟。
日誌には付けない毎日の日課。集まってくるときに目が合う。
(20.9.3)
その3
最後の一羽が去ったあと、何かいる。水面ギリギリを泳いでいる。いるけれど、見えない。しばらく伴泳して、船横から船尾へ回り、そこで別れる。必ず船行を見にくるのは、イルカだ。私の海の親友。
(20.9.3)
その4
無風。錨を下ろして、朝食。船上では、水が金。命綱。足りない分は、果物で補給する。この数日の海の荒れで、船酔い気味のオレンジ。あなた、シチリア生まれでしょ?
(20.9.3)
その5
何時間も空と海。船上ではしゃべらない。自分と話せるようになれば、楽になる。甲板長は舳先で遠方を観ている。
雲のスケッチを日誌に添える。
<無駄なものは書くな>船長に目で止められる。
覚えておけるか、あの水平線を。
(20.9.3)
その6
舵を固定して、動かない空の下で長い航海が始まる。「ヨーコも船で暮らしていたのでしょう?南米まで行ったの?」モンテレッジォ村の子供たちに尋ねられたっけ。海を渡って、本を売りに行った行商人たちの子孫だ。
(20.9.3)
その7
甲板長があごを上げた。海が目覚めたのだ。波頭が立ち始める。陸は見えない。
<わかっているな?>船長が背中で訊く。
黙って持ち場につく。待つだけの時間の始まりだ。
あの空洞のような時を忘れない。風が海をかする音も。
(20.9.3)
その8
やってくる。やり過ごすのも技のうちだ。その瞬間だけを考える。先回りは意味がない。問題は、今のいま。
心臓の音を聴きながら、待つ。
(20.9.3)
その9
@finestresullarte
https://www.finestresullarte.info/
Edward Hopper, Lee Shore, 1941, Middleton Collection
(20.9.3)
その10
方位計。東西南北ではなく、季節風の名前で方角を呼びます。海の町、船乗りの町では、洗濯物を干すのも季節風を見ながら。
さて。記録を残して、出航。
(20.9.3)
その11
三角形の小さな波頭が立つとき、ウサギが跳ぶ、と船乗りは呼ぶ。
荒れるか。港で待機する。待ちながら、他の船員と駄弁る。不思議な体験談を自慢する。
書き留めて、次には自分が話そうか。
(20.9.3)
その12
一天にわかに掻き曇り。劇的な空模様。
2度と会えない。誰かに伝えたい。言葉が見つからない。大切な記録を残す。
(20.9.3)
その13
待機しているバールの壁には、これ。肝試しのような。海の男たちは、水平線を観ている。どう動くか、各々が判断する。
(20.9.3)
その14
月を待って、出帆。赤い月が浮かぶ。空に導かれて進む。
独り。誰も頼りにしない。海原では自分だけが残る指針だ。鈍色の海原。飲み込まれそうな。薄暮は幻界への始まりだ。
(20.9.3)
その15
夕陽が海に溶けて、吸い込まれて。柔らかな、寂しい、終わりの色。日が暮れていく。
(20.9.3)
その16
残り陽は、海の中から空を照らす。そろそろと昇る月。いつのまにか白い月。舵を切る。
(20.9.3)
その17
陸(おか)が見えた。月は、燻んだ金色。
薄い衣を覆ったような空だ。海は黒々としている。水面には、陸の暮らしが映っている。遠くで犬の鳴き声がする。着いてうれしいのだ。耳の底に残る音。夜露が下り始める。甲板が湿る匂いがする。
明日も待機だ。
(20.9.3)
その18
寝る前に便りを書く。何も書かなくても、送れば無事を知らせることができる。船乗りたちの多くは、読み書きを面倒に思う。
何色で書くか。夜の海を掬って書こうか。
黒くて青い、深い色。
内田洋子
(20.9.3)
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クラウドファンディングも残り12日。あと少しです。
みなさまのお力をお貸しいただけませんでしょうか?
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10月6日まで挑戦は続けますので、引き続き応援をおねがいします。
たくさんの応援をありがとうございます。_____________________________________________________________________________
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