患者中心の医療のために
vol. 10 2020-09-12 0
クラウドファンディングが残り50日を切りました。
ご寄付と共に、皆さまからいただく応援メッセージも私たちのプロジェクトを支えています。ここまでのご支援、誠にありがとうございます。
本日は医療ガバナンス研究所のメンバーからのメッセージをお届けします!
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医療ガバナンス研究所の原田夏與です。
私たちは2016、2017年度のデータ整理に加え、データベースを用い、「診療ガイドライン」作成委員に対する製薬マネー調査を行いました。診療ガイドラインとは、医師が患者の治療を考える上で参考にする資料の一つで、作成委員の大半が医師です。記載された治療法は採用されやすく、推奨された薬は処方回数が増えます。
今回、皮膚科、泌尿器科、血液内科、肝炎の診療ガイドライン作成委員を対象に、謝礼として支払われる講演料(薬や疾患の解説など)、執筆料(パンフレット作成など)、コンサルティング料(新薬開発の助言など)を調査した結果、一人当たり年間平均200万円の受け取りがあることが明らかになりました。
特に肝炎診療ガイドラインでは、受け取り額上位10%の委員が総額の約60%を受け取っていたことがわかりました。少数の人が多額の受け取りをする傾向は他の診療ガイドラインでもみられます。
製薬マネーによって、診療ガイドライン作成委員が意識的、もしくは潜在意識的に、支払いを受けた製薬会社に対して有利な記載をすることがわかっています。これにより、患者は効果の高い薬を処方されにくくなったり、医療費負担が増大するなど、患者中心の医療を害する可能性があります。したがって、その透明性を高め、額を最小限に止める必要があります。
アメリカではサンシャイン法に基づき、$10以上の支払いを開示する規定がありますが、日本にはそもそも法律がありません。学会規定があったとしても年間100万円以上、50万円以上など高額の支払いに対する開示のみです。また、今回の調査では委員公開データの記載漏れが明らかになり、その緩さも問題です。
私たちが調査を行い、具体的なデータとして示すことは、診療ガイドライン作成を行う学会に対して、そして医学界全体に対して、製薬マネーに関する倫理規定を促す一助となり得ます。そしてそれは、医療費抑制や、より効果の高い薬の処方という形で、患者に還元されます。
調査を継続するためには、製薬マネーデータベースの作成が不可欠です。2016、2017年度に引き続き、2018年度のデータをまとめるために、皆様のご支援をいただけましたら幸いです。