カバーデザインを手掛けていただいた植地毅氏から応援コメントが届きました!
vol. 5 2023-11-10 0
お疲れ様です!
凡天劇画会刊行物等のメインデザインを担当している植地と申します。
凡天太郎クラファンプロジェクト第3弾『関東女無頼』コミックス製作、おかげさまでスタートより好調な支援に感謝を込めて、今回のプロジェクトの応援コメントを執筆させていただきます。
前回大成功となった『猪の鹿お蝶』単行本製作プロジェクトは、凡天劇画会10年に及ぶ活動の一区切りと集大成という位置付けでしたが、劇画会代表の國澤氏も序文で指摘している通り、凡天太郎の残した作品数は膨大であり、簡単に終わりが見えるものではありません。今回の『関東女無頼』は、そんな膨大すぎる凡天ワールドの中から「女侠」のキャラクターだけをピックアップした、ベストアルバムというよりベストシングルコンピ的な位置付けの作品集です。膨大ではあっても、ともすればこれらの作品群が全て歴史から消えていたかもしれないと思うと、劇画会の復刻活動は重大かつ尊いことを改めて実感します。
今回、『関東女無頼』の装丁デザインのテーマとして劇画会から指定されたのは「日本文芸社のゴラクコミックス」、しかも通常版単行本ではなく「厚冊」と呼ばれるバージョン。これまで劇画会の装丁では芳文社コミックス、芸文社コミックスをトリビュートデザイン済みですが、日本文芸社のゴラクコミックス厚冊版はまだ未開拓の領域でした。補足しておくと、ゴラク厚冊版単行本とは、通常版単行本の1.5倍ほどのボリュームで刊行されたシリーズで、ズッシリとした紙の重さと厚みが特徴です。 今回の劇画会の構想は様々なゴラクコミックス厚冊版のデザインの良いとこ取り…いわゆる「キメラ合体」というやつで、メインの素体として参考にしたのはケン月影先生の『葬流者』と、梶原一騎・小島剛夕コンビによる大名作『斬殺者』ですが、他にも様々な作品の装丁を組み合わせています。でも色相・配置バランス・帯デザインなど最も総合的に参考にさせていただいたのは、ビッグ錠先生のナンセンスギャグ『くっとろい奴』厚冊版だったりします。
ゴラクコミックス厚冊 左から『斬殺者』『葬流者』『くっとろい奴』
ゴラクコミックス厚冊版の装丁は、これまでの芳文社、芸文社と違い蛍光色などの派手な色彩があまり使用されていません。そのせいで同系統の他社刊行物と比較すると、まあまあ地味な印象なんですが、ここに大人の渋みと魅力があることを見出すのが私の仕事です。今回のデザインでは重要視したのは2点。カバーの配色は白系統が多くても色相は単なる白ではなくクリーム色寄りであったり、若干の水色が入っていたりと単純ではないこと。そして帯の情報の多さがシンプルなデザインを引き立てていること。 この2点がゴラクコミックスのレーベル色を表現する肝であると理解し、特に着目したのが帯でした。帯は2色印刷が基本なので、オリジナルの帯の色相を極力再現しています。カバー全体は1枚絵のシンプルな構成ですが、色相と配置バランスにはこだわりつつ、帯付きを前提としたギミックアートっぽさも狙い通り醸し出せて、いかにも70年代に出版された雰囲気を感じ取っていただければ幸いです。 (ちなみに、私がデザインを担当した劇画会刊行物の中で、帯付きというのは久しぶりで、國澤氏に確認したところ2013年の『忍法無惨伝』以来10年ぶりでした!)
凡天太郎『忍法無惨伝』凡天劇画会 2013/12/31発行(完売)
『関東女無頼』の単行本は、単なる旧作の復刻合本ではなく、これまでと同様にコレクターズアイテムとして、マニアやマンガ好きのための書籍デザインを目指して製作されています。今回もまた、本という媒体を所有する喜びを分かち合える方々に満足してもらえるような仕事を心がけました。クラファンプロジェクト実現に向けて、引き続き皆様の熱いご支援とお力添え何卒よろしくお願いします。
植地 毅 (デザイナー/ライター)