監督インタビュー②
vol. 20 2021-07-26 0
今回の脚本・監督・俳優を担う重野滉人さんインタビュー②
ー現時点では撮影がほぼ完了という状態で、これから編集などのポストプロダクション作業があるわけですが、今のところ最も大変だったことはどんなところでしょうか?
やはり自分の頭に描いている世界観が、言葉少ない脚本だけでは伝わりづらいと思ったので、こういうイメージで撮りたい、ということをキャストへ伝えて理解していただくことですね。
正直なところ、キャストの方々からもたくさんの意見をもらいました。そのひとつひとつの意見はとてもありがたいですし、参考にしたい気持ちも自分の中ではありまして。
ただ、周りの意見を聞きすぎてしまうことで、自分の世界観にブレが生じることにも危機感をもっているので、そこらへんの取捨選択も難しかったことのひとつです。
それと、現場では監督でもあり俳優でもあるので、瞬時にその切り替えをしなくてはいけない部分も難しいところではありました。それは、主役の辻さんも相手役の僕が監督であり俳優であることで、戸惑うことも多かったのではないかな、と思います。
ー辻夏樹さんを主役の青山あおいにキャストした理由はどんなところだったのでしょうか?
去年の夏、三浦大輔さんのワークショップに参加しました。その時に同じチームにいたのが辻さんでした。ワークショップ後もその時使っていたテキストで練習したいと連絡があったんです。終了後にこういう連絡をもらうのは珍しくて、本来であれば「ちょっと面倒だな」と思う自分がいたとは思うのですが、彼女の佇まいはずっと頭には残っていました。なので一緒に練習をすることになり、その時にいろんな話をしたんですね。同い年ということもあり、俳優としてのキャリアであがいているというか、悩みとか境遇とかも似ていることもありまして・・・それで今回、辻さんと一緒に戦いたいな、と。そう、言うなれば戦友というか、そんな感じです。
結果として、辻さんにお願いして本当に良かったです。彼女とは一番コミュニケーションをとりましたし、実際現場では意見の相違も度々ありました。でも、この相違をお互いぶつけあえて、よりよい作品を作ろうという気概もそんなところから感じることができたので、本当に良かったです。なんでもかんでも「はい、そうですね」とスムーズに行くことなんて実際無いと思いますし、「こうした方がいいのではないか?」とか「いや、これはこれでいきたい」といった異なる視点を持つ者同士が切磋して作品を創り上げてゆく方が、実際いいものができると思います。
ー一番印象に残るシーンはどんなシーンでしょうか?
そうですね、色々印象深いシーンばかりではありますが、最も気を遣ったシーンは、僕が演じる佐藤しょうと、辻さんが演じる青山あおいの距離が初めて近くなったシーンですね。
ロケーション的にも高架下という撮影的に難しい環境でしたし、台詞が少ない分、すべての空気感も出てしまいます。ふたりの距離の温度感をイメージに近づけるところがとても印象深く残っています。このシーンについては現場でも辻さんとたくさん話しをしましたね。
―ロケーションといえば、今回すべてのロケーションに監督のこだわりを感じました。
はい、ロケハンもひとりで大分重ねました。やはり映像感というか、台詞以外の部分にも相当こだわって撮影しました。なので、キャストの導線も自分の中では「こういうラインで歩いてほしい」という確固たるイメージがあるので、キャストとしては相当やりづらかったのではないでしょうか。俳優に縛りが生じるわけですから。ただ、自分としてはその縛りや制限の中でどう表現していけるか、という部分に挑戦したいんですよね。本当にキャストのみなさんはやりづらかったとは思います(笑)
ー重野監督の作品は過去作品をみても、映像感が強く割と淡々としている印象がありますね。
そうですね。全体的に淡々としていると思います。でも、その淡々としているものの中で伝わることが有ると思っていて。なので、うーん、やっぱり僕の脚本はなかなか理解しづらいかもしれません。
(2020年ショート作品『ある晴れた日の一日』)
ーこれから作品が仕上がって、上映されて・・・と進んでいくと思いますが、本作品をみる人に伝えたいことはありますか?
恋愛とか、友人との出会いとか、一見するとありふれた出来事の中にも、タイトルに入っている「死」というのがあると思うんです。ありふれたものの中に死が隣接しているというか、割と近いところに「死」というものがある。普段ニュースで取り上げれる事件は、自分から遠い話で聞いているかもしれませんが、自分にだってその事件の当事者になる可能性がゼロとは言い切れない。そんな感覚を僕はもっています。みなさんにも、そんなことを考えるきっかけになると嬉しいなとも思います。
ータイトルの「ぼくときみとそして死と」は、「死」という言葉が入っているのでインパクトがありますね。「死」という強い言葉をタイトルにもってきた理由はありますか?
タイトルについてはかなり考えました。やはりタイトルは映画にとって最も重要な部分でもありますし。
最初は3案あったんですね。このタイトルを含めて。あとの2案には「死」という言葉をあえていれなかったんです。それで、地元の友人たちに「この中だったらどれがいい?」と聞いたり、スタッフにも意見を聞いてみたのですが、割と分散してましたね(笑)
ただ、やはりこの「死」という言葉を避けて通れないところもあり、勝負をかけたい気持ちもあってこのタイトルに決めました。
多分、今までの自分だったら他の2案にいきそうなのかもしれないのですが、本作品を作ることで、僕自身、今までの自分を脱却したい気持ちも強くて。
ーところで、今回撮影中にいろんなトラブルがありましたが、そのたびに重野監督は100本ノックを受けるかごとく、自ら進んでちゃんと拾っていくのが印象に残っています。
トラブルありましたね(笑)現場はトラブルの連続です。でも、そのトラブルも楽しんで受けていこう! という気持ちもあるんです。20代最後に、多くの人を巻き込む覚悟をして進んでいきたい、というか・・・ なので、今回本当にこの作品を支えてくれるキャストやスタッフ、そしてクラウドファンディングで支援していただいている方々・・・ 言葉にならないくらいの感謝なんです。トラブルシューティングの圧よりも感謝が勝ってます。こんな経験はいままでなかったので、本当に貴重な体験をしている最中だと感じています。
ー撮影も終わり、今後の展開はどんな感じになるのでしょうか?
これから映像・音声の編集や音楽をつけるといったポスプロ作業に入ります。仕上げたら国内外の映画祭への出品と、このクラウドファンディングにご支援いただいている方々との初号上映会も3月に予定しています。また、配給会社回りも行っていくつもりです。
ー劇場だけでなくオンライン配信などは考えていらっしゃいますか?
はい、もちろんです。コロナでみなさんが自宅で映画を観る習慣もできつつあると思っています。本作品をひとりでも多くの方に見ていただきたいので、積極的にやっていきたいですね。スマホで見る、ということも想定して絵作りもしてきたんですよ。
ー最後にこのページを読んでくださっている方にひとことお願いします。
クラウドファンディングは今回初めての試みで、始める前は本当に支援が集まるのだろうか? と不安もありました。でも、本作品作りでは自分へプレッシャーをかけて大きく進めていきたい気持ちもあり、クランクイン前にニュースリリースを出し、モーションギャラリーでクラウドファンディングをし、劇場公開までやりきる! と宣言をしました。クラウドファンディング最終日(7/30)まで5日間ありますが、多くの方々にご支援をいただいて、感謝の気持ちで一杯です。
皆さんからのご支援に報いるためには、とにかく自分たちにできる最大限の努力は惜しまないと決め、作品作りだけでなく、作品をどう広めていくか、という部分についても真摯に取り組みたいと思います。結果はこれからどうなるかわかりませんが、とにもかくにも覚悟をもって進むしかないと思い日々動いています。
このモチベーションはひとえに、ご支援いただいている方々やこのページを読んでくださっている方々、ツイッターなどで応援してくれている方々のおかげ、というのは間違いありません。本当にありがとうございます。