【応援メッセージ③】 出演者・加藤笑平さん
vol. 13 2022-10-05 0
本作に「偉一郎役」で出演している加藤笑平さんより応援メッセージをいただきました!
ある日、潮風を浴びながら人吉の水害復旧支援で作業中に泥の中から救った球磨焼酎を飲んでいると、一本のメールが届いた。
熊本のタルコフスキー、遠山昇司がまた映画を作るという。聞けば、地元の八代や人吉の水害、そして自身の現状から着想を得て、もう作るまいと思っていた映画作品を今一度作らなければいけないと、奮い立ったのだと。
いま、やらなければいけない。
その感覚は常に全ての人が持っているものだと思う。が、実際に動き出し、それをやる、産み出すという行為を完遂できるものや場面は非常に限られると認識している。
そして、多岐にわたるメディアとグローバル化に縛られ、言葉が先に来る教育や宗教、家庭環境や生活環境に雁字搦めにされたら制約も縛りも多くてたまったもんじゃない。
表現とは何か。
私自身はこの流動的な世で、変わらず絵を描き、褌になりパフォーマンスを続けている。塩を炊き、米を作り、日々の微細な変化に喜び、苦しみ、それをもなるべく機微に捉えて“絵”というものに集約させている。いわば、日々の結晶。である。
遠山昇司はもがき苦悩し、日々が結晶化する以前の、形にならないし自分独りではどうしようもない結論の出ない日々そのものの美と残酷さと無常を、それでも独りで導き出そうとしているように感じる。
彼は、言葉をより少なく、その意志をカメラを通した絵で語った。
そして、瞬間の空気を捉え、言葉ではなくそれの間や、絵から想起される様々な命の光と影を映し出していた。
作品とは、楽しんでもいい、話してわかり合ってもいい。
でも、根っ子の芯は、独りで感じるものだと思っている。
熱量を持ち、構想から準備、撮影と短時間でやり切った本作がどのように人々の間に間に流れ込んでゆくのか、とても楽しみだ。
加藤笑平[かとう・しょうへい]
1983年東京生まれ。2005年に熊本県天草へ移住。自ら農耕・塩づくりを行い生活している。自作の、あるいは身の回りの素材を用いて絵画やインスタレーション、パフォーマンス作品を同時に展開し、相反するものが共存している日常の状態を形にする。2020年より長崎県野母崎に拠点を移し、 野母崎樺島製塩所を立ち上げる。主な展覧会に「段々降りてゆく」(熊本市現代美術館、2021年)、「VOCA展2022」(上野の森美術館、2022年)。katoshowhey.com