【応援メッセージ④】 出演者・中原丈雄さん
vol. 14 2022-10-07 0
本作に「出水(喫茶店のマスター)役」で出演している中原丈雄さんより応援メッセージをいただきました!
何処の川も同じだろうが、球磨川も住む地域によって大きくその顔を変え流れる。源流を見れば、その余りの川幅の狭さ小ささにきっと驚くだろう。が、小さくとも勢いを持つこの川はやがて球磨地方の上流から町や村を抜け中心の町、人吉に向かう頃には、其れは人々の尊敬と畏敬を水面に大きく抱き大河の如く堂々とゆったりとしてその姿を現す。
この作品の主題に大きく振りかざす主張は無い。故郷を離れ都会に暮らす一人の女と、かつて共にこの故郷で遊び過ごした、この地を離れる事の出来なかった男たちとの再会の物語である。
産まれたばかりの子を亡くした女は、久しく離れていたその町に戻る。しかしその川は女の心の如くに荒れ狂い、多くの命を生活を奪い哀しみと共に海に帰していた。
山奥の源流から八代海に注ぐこの川に青春を生きた若い男達と女の、ささやかな再会と呟くような淡い青春時代の会話の話である。
戻る事の出来ない青春時代を女の帰省で敢えて思い出す青春群像である。
川はかつてない程に荒れ狂い、その地に住む多くの人々の心と人生と想い出と喜びと将来と、約束された証と生きる糧と、親、子供、孫、恋人、友人、家、土地、大切な毎日の身の周りの数々を水に流した。
あれ程の濁り狂った川はやがて息を鎮め、何事も無かったの如くに青く空を映し、静かに八代海に水を運ぶ。人々も忘れられない出来事に敢えて触れず、これ迄と同じ様に静かな営みを始める。誰も川の悪口を話さない。
この作品はそんな日常のささやかな想い出を振り返った、魚の様に川辺で暮らす人々の、水を主題にした小さくとも心ある清らかな物語である。
中原丈雄[なかはら・たけお]
熊本県・人吉市出身。劇団未来劇場にて数多くの舞台を踏んだ後、映画・テレビ等の映像世界に移る。中島丈博監督作品『おこげ』(1992)にて映画デビュー。以降、映画・ドラマに多数出演。近年の出演作に、NHK 大河ドラマ『真田丸』、連続テレビ小説『ちむどんどん』、終戦ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』など多数。山崎製パン「ゴールドシリーズ」の CM にも出演中。球磨焼酎大使、ふるさとやまが大使も務める。