遠山昇司監督よりメッセージ
vol. 2 2022-09-16 0
映画『あの子の夢を水に流して』の脚本・監督をつとめた遠山昇司です。クラウドファンディングにご参加いただきありがとうございます。
本作は、私が脚本と監督を務めた長編劇映画としては3本目であり6年ぶりの新作となります。
令和2年7月豪雨(熊本豪雨)の爪痕が残る熊本県八代地域と球磨川流域を舞台に去年の10月に撮影を行いました。球磨川という川の流れと我が子を失った女性の姿を描いた物語です。
私にとって本作は特別な映画です。その理由のひとつはこの川が私の故郷・八代を流れている川であるということ。被災地を巡りながら私は脚本を書き始め、当時の豪雨災害を目の当たりにした方々の話を聞きながら脚本を完成させました。
今回の物語は、上流へと向かう物語ではなく河口へ向かう物語として書いています。澄み切った美しい水が生まれる始まりへ向かうのではなく、生きる上で積み重なる不浄を受け入れる河口へ。
川の流れに寄り添うように登場するのは、「光」と「水」と「風」と「石」、そして「呼吸」です。これらをシンプルに描くというよりは、私達の世界を構成する原始的な存在として描きました。それは、生命そのものでもあります。
私たちは、映画スタッフ、そして物語の登場人物たちと川を巡り、球磨川の「生命」と出会ってきました。私たちが出会った生命、そして失われた生命がこの映画には残されているはずです。
残されたものが希望と言えるものならば、その瞬間こそ映画なのではないかと信じて作り上げました。