原作について書いてみます岡田
vol. 3 2018-06-22 0
クラウドファンディングにご協力いただいた皆様、本当にありがとうございます。岡田あがさです。クラウド日記はじめてまいります。
今回、塩出太志監督のもと撮影された「この世はありきたり」の原作になった「ワタシガタリ」について少し書いてみようかと思います。
「ワタシガタリ」
女には名前がなかった。
身寄りがあったか友人がいたか恋人がいたかすら覚えていなかった。
女はある日、薄汚い雑居ビルが聳え立つ冷たい路地裏で目を覚ます。
彼女が彼女であることの証は
両腕に抱えられた旅行カバンと体中に広がる痣だけだった。
街を歩いても、彼女に振り向く人も彼女の名前を呼ぶ人もいない。
一人きり孤独を深めていく彼女は
自分のストーリーを自分で組み立て始める。
岡田あがさ一人きりで語る世の中で一番幸せで不幸せな女の話。
…これがワタシガタリのあらすじです。
なにがなにやらですね。
このとき70人規模の小劇場で1日しか公演しなかった作品です。
それを撮影してくれたのが10年ほど前の塩出太志監督でした。
一人芝居をやれ、ということは相当な芸当が試されるわけですが、私にはそれはやれないなと、やるなら他にもっと上手い方がたくさんいるなと思っていて、一人で話すには一人で話す理由がいるなと漠然と思っていたのです。
路地裏でボコボコにされた後の男娼をイメージして書いたものでした。
自我ゆえに人を傷つけて周りの人間が誰一人いなくなってしまったあと、さびしさゆえに周りの人間たちを創作しはじめる主人公です。自分を完全に失ってしまった人間が、新たに自分を想像して構築してゆくというような話でした。
それを塩出太志監督が面白がってくれて10年越しにまたこの「ワタシガタリ」を原作とした「この世はありきたり」が生み出されたのでした。