製作日記3 『ロケーションハンティング』
vol. 3 2018-09-11 0
こんにちは。プロデューサーの小澤です。
日本はいまだ猛暑は続いているのでしょうか?こちらはカラッとして過ごしやすい気候です。
先日の大坂なおみ選手は素晴らしかったですね。私も中高とテニスをやっており、今でも暇があれば友人とテニスしているので、非常に嬉しい出来事でした。
ただあの表彰式はちょっとひどかったですね。US Openの観客はすこしRudeでした。審判に対してのブーイングもあったのでしょうが、もっと純粋に彼女の初グランドスラムを祝って欲しかったです。
さあ前書きはこれくらいにして、今日は映画のロケハンについて書きたいと思います。
ロケーションハンティングとは、映画で使用するロケーションを探して、その場所のオーナーや管理者と交渉して契約し、ロケーションを抑えることです。このロケハンが、映画を作る上で一番めんどくさいかもしれません。
私はプロデューサーですが、その仕事はといえば主に監督のヴィジョンを現実化させる裏仕事です。今度プロデューサーの仕事についても詳しくかければと思いますが、ロケーションに関していえば、こんな場所で撮りたいという監督の希望と脚本をもとに、ロケーションマネージャーと一緒になってロケーションをさがします。
その過程は以下の通りで、
1 脚本をブレイクダウンする
2 ロケーションサーチ
3 ロケーションスカウト
4 管理人との交渉・契約
5 シティ(役所)からのパーミットを入手する
6 保険をかける
7 再度ロケーションスカウト
8 撮影
という感じでしょうか。これでもざっくりとした流れになります。
1 脚本のブレイクダウン
ここではまず脚本を読み込み、何が必要なのか一つ一つリストアップしていきます。例えばロケーションであったり、登場人物であったり、プロップだったり、撮影するにあたって必要になるものを全て書き出します。このブレイクダウンを元に、予算や、ロケーション、撮影スケジュール等が決められていくのです。ハリウッドでは主にMovie Magicというソフトウェアがブレイクダウンのために標準で使われています。プロデューサーならばこのソフトウェアの使い方は必須です。
2 ロケーションサーチ
1でリストアップされたロケーションを元に、現実に存在する建物や公園、協会など、撮影に使える場所を探します。建物であれば、wrapalのような撮影専用ロケーション予約サイトもあります。しかし撮影専用なだけあって、すこしお高めなので、予算を抑えたいインディーズ映画などでは民泊でおなじみのAirbnbを使って建物を探し、直接オーナーと交渉することもよくあります。
(余談ですが、アメリカではAirbnbで宿泊先を探すのは本当にごく一般的なことです。東京オリンピックの際に外国人がAirbnbを使ってこぞって東京近辺の民泊をしまくることは想像に難くないので、早くそこらへんの法整備を進めておかないと大変なことになるでしょう)
3 ロケーションスカウト
見つけたロケーションを実際に訪れて、はたして本当に映画の撮影に使えるのか調査します。例えば撮影には、機材を運び込みこむ巨大なトラックでやって来て、撮影の間常駐しますし、その他クルーもそれぞれ車でやってくるのでパーキングスペースの確保は第一優先です。その他、電源のワット数や、まわりの騒音レベル、周辺住民の様子など、あらゆる点を事前に調べます。ここで手を抜くとあとで大変なことになります。
4 管理人との交渉・契約
3の結果、どうやら撮影には適していそうです。そうなると、管理人との交渉に入ります。
管理人が一番嫌うのは近隣住民への迷惑です。映画の撮影では多数のクルーが動き回りますし、12時間もその場所を占拠します。
そのため管理人には、近隣住民には迷惑をかけないこと、それを管理する人間がいること(ロケーションマネージャーが安全管理を行います)、その場所を傷つけず元の状態で戻すことを保証します。そのために保険にも入ります。管理人の不安をここで全て解消した上で、あとはどれだけ安く使わせてもらえるか、交渉あるのみです。そして契約(ロケーションアグリーメント)を交わします。
5 シティ(役所)からのパーミットを入手する
ロケーションを確保したからこれでOK!とはなりません。つぎにそのロケーションが位置している市の役所から撮影のパーミット(許可)をとらなければなりません。
なぜかというと、多数のクルーがその場所を出入りし、多数の車がその周りにパーキングするため、市の道路を使用することになるからです。また何か撮影時に問題が起きた時のために、事前に市に撮影の日程を通知しておく必要があるのです。
市へのパーミットの申請方法は様々で、手続きがめんどくさいところもあれば、簡単に許可が下りるところもあります。たとえばオレンジ市で撮影する場合、近隣住民から撮影許可の署名を集めて回らなければなりません。何度かしたことがあるのですが、非常にタフな仕事です。今ではパーミットが簡単に下りる市を選ぶことが多いですね。
6 保険をかける
さあロケーションを確保した。市からもパーミットをとった。撮影だ!ちょっとまってください。
もう一つ大事なことがあります。それは先ほども述べました保険です。
通常映画の撮影に使うロケーションは特別な場所であることも多いです。そんな特別な場所で何かを壊してしまったり、事故が起きてしまった場合、大変なことになります。多額の賠償金を請求され、下手をすれば訴えられます。それを避けるためにも、ロケーションに保険をかけるのです。そうすれば最悪何か問題が起きても、$500ほどのライアビリティーですみます。
7 再度ロケーションスカウト
すべての契約ごとがすんだら、あとは撮影を残すのみです。撮影前に最後のロケーションスカウトとして、当日どのように機材をセッティングしたり、撮影を進めるのかを最終チェックします。
8 撮影
さあ待ちに待った撮影です。限られた時間の中で、撮るべきシーンを全て撮り終え、時間内に撤収できるよう頑張りましょう。来た時より綺麗にして帰る。それはどこでもいっしょです。おつかれさま。
以上が、ロケーションハンティングの一連の流れです。
どうです?めんどくさいでしょう?私も正直好きではありません。まあ予算がたっぷりあるなら簡単なんですけどね。お金さえ払えばロケーションなんて選び放題なんですから。お金がない中でどうやってベストのロケーションを見つけ出すか。それがプロデューサーとロケーションマネージャーの仕事です。(あなたのご支援があればいいロケーションで撮れるんです。さあ支援してください笑)
本日、実際にロケーションハンティングに行って来ましたので、明日以降にその様子を撮影した動画を紹介したいと思います。トップの写真も今日のロケハンの様子です。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。他にもこんなことを記事にして欲しいとかありましたらどしどしご要望をいただけると幸いです。
小澤 隼