制作日誌#3|映画にふく風
vol. 6 2024-09-23 0
映画「STRANGERS」を広く届けていくためのクラウドファンディング、残り約2日間となりました!これまで89人の方に、総額974,500円のご支援をいただいています。達成まであと一息となりました。励みになりますので、最後までご声援いただけますと嬉しいです。
本日は池田監督による制作日誌#3をお届けさせていただきます!
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私は映画館にひとり座り、かすかな風のさざめきや、木々の葉の揺れを感じるのが好きです。
『STRANGERS』は、サスペンスフルで怖さもある映画ですが、静けさを感じられる作品にしたいと思っていました。台詞の少ないシーンも多く、効果・音響が重要になるというのは最初から念頭にありました。
音響効果には、録音・整音の柳田さんから、サウンドボックスの武藤さんをご紹介いただきました。
(サウンドボックスは『AKIRA』や、今敏監督作品『パーフェクトブルー』、『東京ゴッドファーザー』、『千年女優』などの作品の音を手がけられている)
最初はとてもお忙しいということを聞いていたし、できる範囲で必要な音だけをつけていただけないか、という相談のつもりで目黒のカフェで打ち合わせをしました。が、映画を観て面白かったと言っていただき、登場人物の背景や意図、そして好きな映画などについていろいろ話をしました。
当初私は、60年代のヨーロッパ映画のように、静かなところは静かにして、わかりやすい足音や風の音を入れていく、というシンプルな表現を考えていました。が、当時は技術的な制限(多くの作品はモノラル)があったからそれでよかったかもしれないが、現代にそれで良しとしてしまっていいんですか?もっと新しいものを目指すべきです、とたしなめられました。
しかし、その時は途方もないものを背負わせてしまったことに気がついていませんでした。この作品は登場人物が多く、足音や衣擦れ、動作音だけでもものすごい物量。また、カメラが引いているカットも多く、背景にいろんなものが映っている。そのほとんど全ての音について武藤さんが録り、作り込みをしていく。
普段の忙しいお仕事の合間を縫っては作業をしてもらい、4月末に終えるつもりでいたのが、初めてダビングスタジオに入ったのは7月ごろで、それでようやく映画の半分という状況でした。
スタジオに入って、はじめて 5.1 chで合わせた音を聞いた時の高揚は忘れることができません。
ひとつひとつの人物の動作が浮かび上がり、目に見えるようになっている。背景でざわめく木々が声をあげ、音が階層的に重ね合わさり、静けさの中に階調と抑揚がある。それぞれの人物の足音にさえ表情があるように感じた(後で聞いたら、別のヒールを履き分けているそう)。初めてこの映画の声を聞いたような気持ちでした。
中断期間を含み作業は 8ヶ月程度に及び、最終的に 11月中旬に映画は完成しました。武藤さんはもう少し時間があれば…ということを言っていましたが、この規模でできる以上のことを全てやりきったと思います。音のトラックは 100をゆうに超えていました。
私はよく、ここの風がああだこうだと言っていたのですが、武藤さんはそんなに風がお好きならと言い、出来上がったものを見ると、クレジットで私の名前が出る時に風が吹いていました。
ほとんど映画館でないと聞こえないかもしれないかすかな音たちですが、その心地良さを少しでも感じてもらえたら、とても嬉しいです。
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ご声援のほど、よろしくお願いします!
映画「STRANGERS」制作チーム