テーマ曲のデモが届く
vol. 87 2020-12-13 0
86日目終了。
何度目の週末だろう。
本日は伸びなかった。
週末は意外にアクセス数も低くなる。
何かが足りないのかもしれない。
織田稚成からデモが届く。
テーマ歌を予定している「鳴かないカラス」。
今はスマフォで録音して、LINEで送れるんだなぁと実感。
前は面倒だったもんなぁ。
PCに送ってもらうのにも、録音してMP3に変換したりして回線も遅かった。
でも相変わらずの、ただテレコを回すだけの音源は変わらない。
今は誰もがDTMである程度完成形のデモを作れたりするらしい。
聴こえてくるのは、ギターと織田の歌声だけ。
思えばこのデモを聴いているのは非常に限られたメンバーだけなのだなぁと気付く。
僕たちのバンドは曲の作り方はずっと同じだった。
詩先だから、先に僕が詩を送る。
届いた詩の中から思いついたものだけ曲を創って僕に聞かせる。
二人でリハに入って、ギターと唄だけである程度の骨格だけは創る。
それを録音してバンドメンバーに送信する。
その後にバンドリハに入って、アレンジを固めていく。
一番、ライブをしていた頃は、二人でのリハを割愛することもあったけど。
そのぐらいまだまだ粗い。
それでもメロディはわかるし、リフもわかる。
そしてこんな雰囲気だからねということも伝わる。
そして二人で仕上げようという感じも透けて見える。
ここは意外と勝負で二人でリハに入るまでに自分なりの何かは持っていかなくちゃいけない。
こういう感じにしようという提案がお互いにないと曲にならない。
先が見えれば、集中力が高まっていく。
二人だけだから出てくるアイデアは限定の分持ち込まないと話にならない。
バンドアレンジになった時に更に広がるための仕込みのようなもの。
織田の声が僕の声に代わるだけで、ものすごくイメージが変わる。
本当にこれまで何回繰り返してきただろう。
金曜日の夜。
大抵は朝までやって、どこかで乾杯もする。
今はどこのバーも閉まっていそうだからそれも出来ないかもしれないけれど。
リハスタは場所によっては2人だと格安の個人練習で入れる。
だから際限なく何時間もやってしまう。
集中出来ない時はまるで進まないけれど。
今週なのか来週なのかわからないけれど再びやってくるだろう金曜の夜。
レコーディングまでたどりつくとしたらいつになることやら。
そしてその頃にはもうデモとはだいぶ違う曲が出来上がる。
映画の音楽は通常、映画の後に創られることが多い。
あり曲であれば別だけれど、映像を観て曲を創ることも多い。
何がベストなのかわからないけれど、僕としては先にレコーディングをしてしまいたい。
曲のイメージが映像を豊かにすることがあるのを知っているから。
まぁそればっかりはお願いするバンドメンバーやスタジオ、RECエンジニアのスケジュール次第だからなんとも言えないことなのだけれど。
いずれにせよ撮影よりも早く動き出そうと思う。
メジャーとインディーズの違いなんてもう希薄になっている。
明確に資本という格差はあるけれど、それ以外はかつてほどじゃない。
個人が発信できる時代になったのだから、むしろ商業主義なメジャーは作家性をどこかで犠牲にしていると一般の人にまでわかるようになってしまっている。
メジャーはメジャーでどこかそれに気付いているから、インディーズ的な何かを作品の中にいくつか練り込むようなことをしている。
それはそれでどんどん巧妙になっている。
僕が演劇を始めた頃は、メジャーとインディーズには明確な違いがあったように思う。
僕は確実にメジャーという場所で闘う人ではないんだなと早くから気付いていた。
そもそも小劇場という世界はメジャーと正反対の場所だった。
織田さんと二人でバンドをやり続けた頃、劇団の目標はメジャー劇団と口にしていた。
劇団でメジャーなんて実は、新劇や劇団四季ぐらいしかないのかもしれないけれど。
誰もが知っている劇団になろうと皆で何度も夢を見た。
それと同時進行で僕は織田と、インディーズという立ち位置でバンドをしていた。
それはある意味で自分の立ち位置についてより強く理解をする時間だったのかもしれない。
ライブハウスの小さな楽屋で酒を飲みながら、僕たちはゲラゲラ笑ってた。
ざまあみろといつも思ってた。
結局、今は物差しの大きさでしかなくなった。
大手映画会社製作の映画がメジャーなのだと言えばそうかもしれないけれど。
世界という場所から見ればハリウッド以外は全てメジャーではない。
全世界を対象にした映画製作を出来るのは限られてしまった。
インディーズではないから、マイナーということだけれど。
ところが世界という市場に出てしまうと、マイナーな映画の需要は想像以上に広い。
結局そちらの物差しで測ってしまうと、同じ需要の中で映画を発表することになる。
僕は多分、僕の立ち位置からざまあみろと、世界に向けて発信したいのだと思う。
織田さんとのバンドの曲をテーマ曲にしたいのはそこから来ている。
自分たちから生み出したものでゲラゲラ笑っていたものをそのままぶつけたい。
それは今まで30年間続けてきた演劇にも言えることだ。
評価についてはわからんけども。
でも、多分、まだ世界は僕たちを知らないという自信がある。
僕は僕がやってきたことを徹底する。
織田さんとやって来た事は僕がやって来たことの一部だ。
インディーズとは自立しているという意味だ。
今日までずっと自分の足で歩いてきたんだという矜持がある。
だからこそ自分の足を前に動かして作品を創る。
ここに日々書いていくことは、その歩いていく道を伝えていくこと。
ここまでたくさんの人たちに応援されていて。
そんな人たちが、どうやって映画を創って、どうやって発信していくのか。
どんどん楽しんでもらう。
そこまで全部含めて、映画「演者」になっていくのだと思っている。
織田との楽曲製作もこのアップデートに書き続けることになるだろう。
世界の端っこでゲラゲラと笑いながら。
痛快に進み続ける。
そしてどこかに辿り着いてやる。
その時に、これを読める皆様と大きな達成感を共有する。
とてつもないカタストロフィを一緒に感じてもらう。
映画が公開される時。
この曲がどんな曲なのかもわかる。
デモが届いた日、リハの日、バンドリハの日、レコーディングの日、マスタリングの日。
その全てを知って、その上で、映画完成と共に曲を聴くのだから。
そんな体験を参加した全ての人にしてもらえたらなって思っている。
面白いことが起きるぞ。
絶対に。
こんなに面白いことないねって思えるようにするのだ。
87日目が始まる。
感染拡大は止まらない。
世界の混乱も止まらない。
それでも僕は夢をみる。
いや、もう夢ではない。
圧倒的な現実だ。
見ろよ、マスクだらけの風景を。
現実の方がなんだか虚構の世界だ。
不自由でがんじがらめの世界で僕は自由に歌う。
感染するスピード以上のスピードで逃げればいいのさ。
もう闘いの日は始まっている。
創作しているのは僕だけではない。
小野寺隆一