どこまで行っても思うだろう
vol. 41 2020-10-28 0
40日目終了。
4年前の今日がクランクアップの日。
正確には何人かは撮影を残していたのだけれど。
メインとなるロケ地での撮影は全て終わった日だった。
翌日、翌々日は全員で片付けて、その次の日にはトイレなどの撤収作業だった。
その日から公開決定まで続いた日は想像以上に自分自身を磨き上げたなぁと思う。
役者たちにとっては撮影終了でやることがなくなる。
公開が決まったら皆で宣伝をお願いするからねと伝えて。
その後は長く長く一人で走り回る日が続いた。
編集、MA、グレーディング、字幕製作、試写会準備、配給会社との契約まで。
すぐ前日まで仲間と並走していたのに急に一人になったような気分だった。
不思議な時間帯だったなぁと今も思う。
プロデューサーとの宣伝会議なんかも思い出したりする。
仲間たちはやることがなくなったと同時に舞台を渇望して。
二日間だけの公演を企画したり、劇場を押さえたりしながら。
時々、今も大変なの?なんて聞かれて、思わず笑ってしまうような日々だった。
ポストプロダクションを知ることは大きなことだった。
撮影に至るテクニカルな部分を勉強し続けていたのに。
急に映画の世界が更に奥深く、更に広いものだと知った。
その中で一番悔しくて今も悔いが残るのが、海外映画祭へのエントリーだった。
箸にも棒にもかからなかったら、そこまでじゃなかったのかもしれないけれど。
海外映画祭のディレクターから意見が出るという所まで行った。
送ったのは完成品ではなかったはずだ。
そこから、いただいた意見を元に、再度編集をした。
僕は3種類の編集版まで用意した。
今も何が正しくて、何がいけなかったのかは何度も考えてしまう。
あの時、あともう一歩が出来ていたら、また少しだけ世界が変わったのだろうか。
その頃から。
いや、もしかしたらそのずっとずっと前からだけれど。
僕は「外に向かう」ということを常に意識してきた。
すでに辞めてしまった仲間と、常に新規のお客様が増えることを探したいと話したこともある。
海外への映画祭の参加というのはその外に向かうの究極系だよなぁと思う。
劇団だとか小さなプロダクションであればあるほど、つい内側にベクトルが行ってしまう。
すでに応援してくださる皆様へのサービス精神が過剰になっていく。
もちろん、それは何も悪い事ではないし、大事なことなのだけれど。
お客様だって、例えば子供が出来て足が遠のいたり、自然と減っていくのは当たり前で。
内側に向きすぎるのは衰退を意味する。
僕自身にもどうしても無意識にそうなる傾向があるから意識的に自分に注意している。
既に国民的アイドルが一線を引いて、それまでとは違う規模でファンクラブ運営していくのとはわけが違う。
元々が小さいのであれば、それは致命的とも言える。
どうしたって、自分たちを応援してくださる方がいるから自分たちは存在していると自覚する毎日なのだけれど、それでも高い意識で外に目を向け続けなくてはいけない。
映画を創る!という宣言はつまりそういう外に向かうという考えから生まれたものだった。
幸いなことに、応援してくださる皆様が、新しいお客様が増えることを歓迎してくれる素敵な人たちだった。
実際に映画を公開してから、僕たちを応援してくださるようになった人が増えて喜んでくださってもいた。
つまり僕たちは内側に向かってのサービス精神よりも、外側に向かってどんどん進んでいくことこそ、一番のファンサービスだったのだと僕は感じていた。
映画を媒介にして、メディアで記事にしていただいたり、それまでとは違う動きもどんどん生まれていった。
外に外に、前に前に、どんどん自分の殻を破っていく。
それしか僕の中に道はないなと思っている。
映画で新たに僕たちを知ってくださった皆様たちに向かって喜んでもらえることを探すことは意外と簡単にできるんじゃないかと思っている。
なんだったら、今すぐに、イベント的な舞台の企画を立てることも、今の僕だったら簡単にできるなぁと思う。
特に劇団が解散したばかりの今は、何かを発表するには一番のタイミングだから、考えた方が良いのかなぁとも思っているのだけれど。
ただそこで僕たちを知っている人だけが喜ぶようなことをすることが本当にベストなのかどうかというのは別問題なんだよなって思う。
きっと楽しんでくれるし、喜んでくれるけれど、一番のファンサービスとは思えない。
本当のファンサービスは違うんじゃないかと僕の中にある。
例えば、映画「セブンガールズ」のDVD化だって流通に乗せないならすぐにでも出来る。
残念ながら採算がとれるほどの販売数になるかはまだまだ疑問なのだけれど。
それでもやろうと思えばできることなのだと思う。
でも今、発売してもレンタルDVD屋に置かれることもなく、すでに知っている人たちのコレクターズアイテムにしかならないだろうことはすぐに想像できる。
ハッピーな方向があるとすれば、出演者の誰かが突然、有名になったり。
劇団や仲間の誰かから派生した何かで、バーターだとしてもソフト化希望の声が高まることが大事だ。
もう一度話題にならないと、本当のハッピーな方向にならない。
自分たちの満足や、お客様が喜ぶことはわかっているけれど、ベストじゃない。
ビジョンも何もなく目の前にある楽しみを増やすだけになってしまう。
でも例えばTSUTAYAに並んでいたりした方が本当はもっともっとお客様は喜んでくださる。
配信が定着しつつある今、DVDの価値は変わりつつあって。
コレクターズアイテム以上の価値観が見いだしづらくなっているというのもあるのだけれど。
リアリティのある方向性を見出すべきなんだって思う。
まぁ、映画作って海外目指す!なんて言っててリアリティもクソもないのだけれど。
でも、僕はベクトルは常に外に外に向けて進んでいこうと思うのです。
そしてどういうわけか、僕を応援してくれる人ほど、それを応援してくれているんだなと感じてる。
次は何をやってくれるんですか?と声を掛けられ続けてる。
外に向かえ。
更に遠く遠く。
もっともっと先まで。
広がり続ける。
クラウドファンディングだってそう。
Motion-galleryという映画の世界で大きな功績を残しているプラットホーム。
共感を繋げるというコンセプトが合致しているから選んだのだってそう。
いつか自慢してもらえばいい。
僕は誰も知らない頃から小野寺さんを応援していたと。
そうなることが僕が一番期待されていることなんだって思っている。
4年前、クランクアップを迎えた日。
思えば、実際に映画を外に向けて発信するスタートの日だった。
僕は今もゴールしていないのかもしれない。
41日目がはじまる。
小野寺隆一