サヨナラなんかしない
vol. 25 2020-10-12 0
24日目終了。
劇団前方公演墳が最後の公演を終えた。
たくさんの愛情を受け続けた劇団だった。
そして僕たちもいつもお客様の事を考えていた気がする。
僕が出演しない公演が最後になったのはなんだか不思議な気分だった。
正直に書く。
確かに解散を決定したのは主宰だった。
それも舞台本番10日前というタイミング。
話し合いの時間も取れなかった。
きっと、みんなそれぞれに思うことがあるだろう。
解散の理由も明確には聞いていない。
ただ僕がきっかけなんだろうと思っている。
若手公演でもほぼ全ての公演に出演し続けた僕が出演をしないこと。
そして、この「演者」プロジェクトを劇団や主宰の力を借りずに単独で始めたこと。
その二つは間違いなくきっかけになったはずだ。
だから僕は会場にいて、少しだけ怖かった。
お客様からも、仲間たちからも。
大事なものをなくすきっかけをつくった奴だと思われても仕方がないから。
そして怖がりながら、同時に、それでもいいさと思っていた。
今も思っている。
これを正直に書くことがその証拠だ。
こいつのせいだと思った劇団を応援してくださる方々が参加してしまうのは忍びない。
犯人に手を貸すようなものだ。
拒絶されることもあるだろうと覚悟していたんだ。最初から。
それはしかたのないことだから。
僕はずっとずっとアクションを起こし続けてきた。
劇団内でバンドを組んだり、お笑いライブをやらかしたり。
ショートフィルムを創ると言い出したり。
台本を書けないなら、オムニバスでもやろうぜと提案したり。
そして、セブンガールズの映画化にむけて走り出したり。
その延長線上で、僕は誰かに頼らずにアクションを起こすと覚悟した。
誰にも迷惑をかけたくなかったし、相変わらずあの野郎が動き始めたというテイで。
団体は一つにならなくちゃいけないものだと僕は思っていない。
色々なやつが集まってるのが団体なのだと思っている。
公演に向かう時に、目標に全員が向かえばそれだけでいい。
そして、自分のアインデンティティを帰属する団体に持つことを拒絶してきた。
名前よりも先に職場が出てきてしまうようなことは厭だった。
お前の所属する会社だとかには興味ねぇよと思って生きてきたからだ。
お前自身に興味があるんだよ!とずっと思って生きてきたからだ。
そういう連中の集まりであることが好きだった。
そして僕は劇団運営に関わりながら、いつもいつも継続させることばかり考えてしまった。
大きな博打に出たことだってあったけれど。
信じてもらえないかもしれないけれど22年間も毎日毎日劇団の事ばかり考えてた。
その僕がきっかけになったんだなぁと思うとふわふわとした気分になる。
多分、主宰と僕の関係性は誰にも説明がつかないし理解も出来ないだろう。
例えば家族であっても、仲間であってもだ。
とにかく喧嘩をしてきたし意地を張り合ってきたし助け合ってきた。
傷もつけ合ってる。ずっと。
誰も気付かないことにも、多分、気付いてきた。
言葉で言わなくたって伝わるだろう?と今も思っている。
だから解散という言葉が出てきた時に、怒りもわいてこなかった。
そうか。そうなるのか。そう思った。
僕のアクションは、そうなった。
多分、解散の理由や原因は1つや2つじゃないけれど。
今回の僕のアクションはその理由や原因をなくす方向ではなかったからだ。
そしてそれをわかっていてあえてそこに向かっていったからだ。
僕は来年の春に48歳になる。
そして来年の春に演劇の道に進んでから30年になる。
そのうちの20年以上の年月をすごしてきた。
ここにあるものは僕にとっては宝物だ。
とっても大事な大事なものだ。
今はもういないメンバーや、一度でも足を運んでくださったお客様も全部含めて宝物だ。
だから劇団がなくなってしまうことは、力が抜けて、何も出来なくなるような出来事だ。
あまりにも濃密な日々だった。
だからこそ、正直に言いたい。
僕がきっかけです。と。
騙すようなことをするのは好きじゃない。
皆にとっての宝物なのだから。
本音を言えばね。
もう小野寺なんかいらねぇよ。やめちまえ!って言われたかったよ。
その言葉をずっと待っていたような気がする。
不思議なんだ、今も。
劇団前方公演墳が解散したのに。
僕の胸には穴が開いていない。
不思議なほどたっぷりと満ち溢れている。
たくさんの思い出、たくさんの仲間たち、たくさんのお客様、たくさんの感情。
ドライに割り切っているわけでもなく、本当にそうなんだ。
約束だって守れなかったくせにね。
メジャー劇団にする!なんて何度宣言しただろう。
今日。
最後の公演だった。
お客様からあたたかい何かが届いた。
仲間たちは最高に輝いていた。
そして僕はいつものようにそれが嬉しかった。
それだけのことだ。
そしてそれは永遠に消えることはない。
実際、もう10年以上前にやめたやつのシーンだってすぐに思い出せるんだ。
あがくだけあがき。
もがくだけもがけ。
そうやって生きていくしかないんだから。
泣きながら、鼻汁を垂れながら、ぐちゃぐちゃになって歯を食いしばるのだ。
たくさんの悩みも抱えたまま走るのだ。
悲しいから生きてる。
嬉しいから生きてる。
サヨナラなんかしない。
僕が生きている限り、ここにあるから。
それだけで充分だから。
犯人だけどね。
原因でもいいよ。
ただただ最高だった。
それだけだ。
小野寺隆一