大事な約束
vol. 18 2020-10-05 0
慌ただしい一日を過ごす。
舞台の準備。
トラックに乗ったり、荷物を運んだり、打ち合わせを続けたり、連絡をしたり。たり。
でも意外に精神的には余裕でもあったりする。
いつの間にか自分は自分のキャパシティをどんどん広げていった。
というよりも、キャパシティが広くないと動けない場所にいた。
例えば舞台で最初のシーンに登場するのだとしても、30分前までPCをいじったりだ。
もうそういうことが出来るようになって10年以上経過している。
ほとんど100人組手みたいな役も演じてきたから。
まして今回は出演がないという意味ではストレスが段違いだ。
倉庫から戻ると稽古場に段ボール箱がいくつか。
今回の舞台は差し入れが劇場のガイドラインで禁じられている。
だから小屋入り前に稽古場に差し入れを昔からのスタッフさんが届けてくださった。
まったく感謝というほかはない。
それと、本当に旗揚げ公演から全公演通ってくださったお客様のツイート。
多くのお客様に向けて、メッセージを送りたいと書いてくださった。
20周年記念公演の10月10日を思い出す。
映画を公開したばかりで臨んだあの舞台で。
昔から応援してくださっているお客様が、映画を観て新しく劇団を知ってくださったお客様に紙テープを配ってくださった。
劇団員へのサプライズで、カーテンコールに、誕生日おめでとう!と声をかけてくださった。
役者が泣きだしちゃったりして、僕たちは全員感動した。
この人たちが、セブンガールズの映画化に協力してくださったから映画は完成した。
そして、映画で新しく劇団を応援する人が増えたことを一緒に喜んでくださっていた。
むしろ、少し後ろから眺めるように、お客様が増えて良かったねと声までかけてくださった。
あの日の事は、その後のさまざまな場所で映画を上映するたびに思い出したのです。
やっぱりそういう全てなんだよなぁと。
僕は思うのです。
すでにやめてしまった劇団員も。
生意気だったあいつも。
そういう全てだと僕は最近感じ続けています。
色々あったけどねー。
意外に思い出すのは十周年記念公演について頭が痛くなるほど悩んだ時期です。
毎日、ずっと。毎日、ずっと。
うん、あの頃にきっと徹底的に考えるようになったような気がする。
キャパシティが拡がっても。
帰宅すると、体は疲れていたりします。
ええ!腰が痛かったの!?みたいに。
まぁ、そんなのも悪くないなぁと思ってます。
そして明日もきっとへとへとになるんだろうなぁ。
コロナ禍の中で、小劇場の舞台の制作をする。
それが自分にとってのどんな経験になるのだろう。
そんなことをぼーっと考えていました。
厳しいガイドラインを、それよりも更に厳しくして徹底して。
それでも開幕を目指すこと。
簡単なことじゃないけれど、やっぱり、やるべきだったのだと思います。
実は僕は横浜 シネマ・ジャック&ベティでのセブンガールズ上映の初日を思い出すのです。
あの日、何年間も応援し続けているお客様たちが映画に来てくださって。
そして、その上映後に話す機会があって、そこで言われた言葉です。
「映画で劇団に興味を持ってくれたみなさんに、早く、小野寺さんの龍馬や中野さんの以蔵とか、新撰組とか、見せてあげたいんですよ。セブンガールズもいいけど、すごいの観たらきっと驚くと思うんですよ。別に幕末じゃなくても。これぞ前墳というやつを!だから舞台が楽しみなんですよ。」と。
それもものすごい笑顔で言われて。
僕はその返答で約束しました。
「必ず次の舞台ではそうできるように頑張ります!」と。
その直後に、いくつかあたっていた中で、駅前劇場なんていう素晴らしい劇場を押さえることが出来ることになったのでした。
1月の舞台で、そういう姿を見せなくちゃいけない、そういう約束をしたとずっと思っていました。
でも、それは出来なかったなぁと僕個人は思っていて。
なんだか応援してくれた皆様を裏切ってしまったような罪悪感に酷く襲われました。
そして、いつか必ず、何かの形で返答しなくちゃいけないと心に誓いました。
すごいのを見せると。
それは今も変わらないです。
多分、そこにはお客様だけではなくて。
今まで劇団にいた全ての元劇団員や、スタッフさんたち。
そういう全員の思いのようなものも含めて、僕はやらなくてはならないこととしました。
皆にもきっとそれぞれ、僕のように何かがあると思うのです。
その何かが今回の舞台で観えるんだろうなぁと思っています。
そんな仲間たちが今日も稽古をしていました。
だから打ち合わせでも準備でも、なんでもかんでも。
キャパシティあるもんで、やってしまうのであります。
さ、明日の準備に入ろう!!
小野寺隆一