セブンガールズ公開から二年目の日
vol. 12 2020-09-29 0
11日目終了。
映画「セブンガールズ」公開日からちょうど2年目の日がやってきた。
新宿K'sシネマ。
あの日の緊張と興奮は一生忘れることがない。
舞台挨拶の前に皆で廊下に並んでいて。
上映が終わると同時に扉の向こうから聞こえてきた拍手の雨。
皆がそこにいることの誇らしさ。
事前に行った2回の試写会があった。
ここで舞台挨拶をしたのは、物語の主軸であるガールズたちと監督だけだった。
それは受付だとか様々なやるべきことがわりふってあったからでもあるのだけれど。
その時も皆が一生懸命働いていて、なんだか嬉しいのと申し訳ない気持ちが入り混じって。
それがこの公開初日は全員での舞台挨拶と決めた第一の理由で。
だって、その日はもうやらなくちゃいけないことなんて何もなかったんだから。
全員が並んで、たくさんの人が拍手をしてくださって。
そして、よくそこまで辿り着けたなぁという長い長い眠れない日々があって。
僕たちはこんなところに来たねぇと、ずっと心が震えていた日。
下北沢の小劇場で演劇をやっている劇団が本当に映画を製作して公開をしちゃった日。
多分、あの日、監督は喜びどころじゃなかったはずだ。
初めて多くの人の目に触れる機会。
どんな評価かもわからない。
まして舞台と違って映画は、監督の視点。
舞台であれば役者が評価されるのに、映画であればそうじゃない場所。
僕に今、足りないものがあるのはわかっている。
一番足りないものはきっと信頼感だ。
劇団で積み上げてきた中での監督への信頼感の大きさを思うと何もかも足りていない。
こいつのシナリオは面白いのか?こいつの映画は面白いのか?
それは出演者も、このクラウドファンディングに参加するか悩んでいる人もだ。
監督というのは舞台の演出家よりも、ずっと信頼されていないと成立しないと考えている。
自分は演劇を始めた当初は台本も書いていたけれど長い時間書いていなかった期間がある。
演出だって、稽古場で役者同士の会話以上のものなんてほぼしていない。
バンド活動をしていた時期には自由にやっていたけれど、あれは映画と連結しづらい。
オファーをして出演してくれると言ってくれた役者たちはいるけれど。
まだまだ本当の意味で信頼されているなんて思わないし、あとから変更になることもあり得る。
じゃあ、信頼しろ!なんて言えるのかと自分自身に問い続ける毎日。
去年の今ぐらいの時期。
公演までも時間があって、劇団の稽古場でやれることが何もなくなった。
だったら何か映像でも撮影しようか?と、シナリオを書いて練習しようと思った。
その時に信頼まではいくわけないんだよなぁと何度も思った。
稽古で撮影しようと思っていたけれど一度も稽古が出来なかった。
時間があるはずだったのに、その時間が潰れていった。
やれることがあるなら、もうやらないでいいよと思いながら。
これはなんだろう?何が進まない理由だろう?と考え続けた。
その練習が始まるのが厭なんだなっていう空気を感じた日もあった。
最終的には人間と人間の信頼感だとも思うけれど。
それでもやっぱり。
才能への信頼というのは絶対に必要不可欠なものじゃないだろうか。
お前には映画を撮る才能なんてないよ!と、いつ誰に言われてもおかしくない。
まぁ、言われたからといって、どうなるわけでもないのだけれど。
練習用に書いたシナリオにも魂が込められいなかったのだと思う。
そして、結局、コンセンサスを取れていなかったんじゃないかって思う。
それに参加すると声をあげてくれた人でも、疑いながら、参加した方が良さそうという感じもあった。
それでは駄目だと思った。
本人が参加したいと思えるようなものじゃなければ、例え練習だとしても駄目だと思った。
まぁ、才能なんてものはない。
そして、魅力なんてものもない。
僕は持っていない。
本来必要なものなんて何も手にしていない。
でも、それとは違うものは持ってる。
わからないことを突き詰めていくこと、調べて自分のものにしていくこと。
誰もが諦めかけてしまうような場面でも、進む推進力。
そして何よりも、作品に魂を込める力を持っていること。
演劇、映画製作、バンド活動、そのためにやってきた全ての事。
積み重ねてきた中で見つけた全てのもの。
どうにもこうにも、泥くさいものしか身につけていない。
ガキの頃は、根拠なき自信だけで突っ走ることも出来た。
でも、根拠なき自信は、実は自信ではないということも大人になって知った。
その時に自分の手の平の上に残っていたモノたち。
なんと不格好で、泥まみれで。
でも、これ以上に最強のものなんてあるかと思った。
もういいんだよ、それで勝負するしかねぇんだから。
かっこつけて、才能があるふりしたってなんにも良い事なんてないさ。
いや、これが最高だって言える才能だけは持ってたのかもしれないなって。
どんなに素晴らしくても、魂がなければ意味がないと思える才能だけは持ってた。
12日目が始まる。
一つの到達点から二年目の日。
あの日からの僕もずっとずっと考えながら学びながら進んできた。
否定された日だって、構わず足を動かしてきた。
僕が本当に意味で信頼感を得るのはまだまだ先になるだろう。
最高で最強だけど、みすぼらしい石のようなものへの信頼感を。
小野寺隆一