徒手空拳
vol. 6 2020-09-23 0
自分が前回このMotionGalleryで始めたセブンガールズ映画化プロジェクトを知っている人たち程、今回の企画を見て無謀なことを始めたように見えるんじゃないかなぁと思っている。
前回は出演者だけでも今回の3倍の人数がいて、監督、美術、音楽とスタッフさんの名前を並べてのスタートだった。
当然、それだけの数の人が関わっているプロジェクトであればその人数だけメールや知り合いに声をかけたりも出来る。
拡散力がまったく違うし、実際に応援してくださる人の数に大きな差が出るのは明白だからだ。
それなのになんでそんなことをするんだろう?と思う人はきっといるのだと思う。
自分が劇団の代表作を映画化しようと思ったきっかけの一つは父を喪ったあとに今そばにいる母に出来ることをずっと考えていたことだ。
もちろんそれだけじゃなくて4度の再演を果たした作品をもう上演する機会が来ないんじゃないかと思ったことなど様々なきっかけがあったのだけれど。
それでもきっかけの一つは家族への恩返しが出来るんじゃないかと思ったことだった。
けれど、それはプロジェクトを企画してから遥か彼方、先の話になった。
むしろ、出演者の家族の皆様がプロジェクトを応援してくださって、支援だけではなくご友人に声をかけてくださったというのも大きかった。
公開して、少しずつ拡がっていった時、はじめて恩返しという形になったなぁと大阪の地で感じたことを思い出す。
つまり、大前提として一人でも多くの参加者を増やしてからクラウドファンディングをした方が良いという経験を既に僕はしている。
だからそれを知っている人ほど、もっと盛り上がる企画にすればいいのにと思うはずだ。
あの時に応援してくださったご家族の皆様は自分の家族が関係していなければ興味をなくしてしまうことはわかりきっていることなのだから。
まして自分はセブンガールズの全てに関わってきた。
宣伝の中で、例えば記事になる時に何を推していくか、どこを強調するのか、徹底的に考えて分析して、企画を立ててきたという経験がある。
僕も出演していることを知ったとある記者さんに僕の名前を載せますか?と聞かれても断ったり、自分自身を殺してでも宣伝を優先しようと続けてきた。
そういう意味でも、セブンガールズよりも抽斗が少ない企画を立てているというのが不利なのは百も承知している。
何年間も睡眠時間を削って取り組んできた中で、厭という程味わってきたことが積み重なっているのだから。
そして何よりも大事なこと。
「皆で頑張って映画を創った」ということこそ、何よりも大きな看板だった。
その看板こそ大事にするべきものだし、今も自分の中で最重要のものでもある。
それはスタイルにだってなりえるし、多くの共感を呼ぶことも知っている。
そして、今もそのことで応援し続けてくださっている方がいることも嫌になるほどわかっている。
そういう全てを何周も考え尽くして、結論としてこうした。
自分が演劇に関わってからの30年近い年月と。
劇団の仲間たちと積み重ねてきた22年の年月と。
そこに自分なりに回答を探し続けた。
何を自分が大事にしてきたのかを見直した。
目の前の壁を越えることがたやすくなる事ばかりを考えることはやめた。
目の前の壁を越えることが出来なければその先の壁すら超えられないじゃないかと何度も考えたけれど。
そうではない。
目の前の壁すらたやすく闘っては駄目なのだと思う。
間違いなくいつか、最終的に、どこかで結果を出すことこそ本当の恩返しだと思った。
今もセブンガールズの上映の希望をしてくださる方々がいて。
そのために実際に今も僕なりに動き続けている。
色々なやり方で、色々な角度で、いくつもの映画館にアプローチを続けている。
失敗してばかりだからあまり言えない事だけれど。
失敗しては一人でいじけたり怒ったりしているから。
いつまでそんなことやってんだよって思っている人ももしかしたらいるかもしれない。
それでも希望してくださる方がいる限り、自分はそれをやめるつもりはない。
でも、そういう活動の中で思うことがいくつもある。
同じことを繰り返すのではなく。
同じやり方でやり直して、一つの結果を出さないといけないと何度も何度も思った。
良い所を認め、悪い所を改善して、更に一歩踏み込むべきだと思った。
もちろん、もう一度「皆で頑張って創る」を目指すことも良いと思う。
そこから新しくどう展開していくのかが見えていてビジョンがあるのであれば。
それをやりたいという仲間がいたら全力で応援する。
自分が知ったこと、やってきたこと、全部伝える。
ただそれを僕が始めることは違うことなのだなと思った。
少ないながら僕を応援してくれる人が観たい僕ではないのだなと知った。
僕はそういう人を絶対に裏切っちゃいけない。
誰かがそれを始めることは、だからきっと僕にとっては嬉しい事なのだと思う。
僕がこれを始めたことを、誰がどう思うかはまったくわからないけれどさ。
勝つか負けるかで言えば、負け戦だぞと言われるかもしれない。
でもいつだってそうだった。
いや、セブンガールズだって決して勝ち戦なんかじゃなかった。
徒手空拳。
情熱だけでは映画は出来ないと断言された日だってあった。
勝つか負けるかじぇねぇんだよ、ばかたれ。
闘うのか闘わないのかだろうが。はなったれ。
闘う前から負けると思っているやつがどこの世界にいるってんだ。
まだまだこの道は遥か遠くまで続いていく。
今日は一人、共に歩んでくださる方が増えていた。
心に火がついた。
そして僕はシナリオに向かう。
大丈夫。
届くさ。
きっと届く。
前を向いている限り。
嘘をつかない限り。
小野寺隆一