制作日記 10「灯りを消して」CD2-2 完全版
vol. 22 2024-04-04 0
vo. 森重樹一 / g. PATA / g. 山鼻朝樹 / key. 三国義貴 / dr. 柏原克己 / arr. & b. michiaki
3月25日(月)雨
朝9時すぎに朝樹さんの自宅前で機材を積み込み、9時40分にスタジオ駐車場に車を停めると、地下に降りるリフトにはすでにコニヤン(エンジニア小西さん)の機材が。遠いのに全く頭が下がります。
この日は横浜THE CLUB SENSATION(クラセン)のオーナーでもあるmichiakiさんアレンジの2曲目「灯りを消して」(DER ZIBET 6th album 『HOMO DEMENS』収録、作詞 ISSAY / 作曲 HAL)のレコーディングです。michiakiさんと言えばかつてTENSAWというバンドで80’s Japanese Rockムーブメントの火蓋を切ったお一人で、現在はPATAさんDIEちゃんとともにRa:INのメンバーとしても活躍中です。クラセンではDAVID BOWIEやブリティッシュロック系のカバーセッションをよく主催していて、ISSAYもかなり頻繁にセッションメンバーとして出演していました。
今日はISSAYがクラセンで度々一緒にセッションしていたメンバーで、前回「Perfect Kiss」同様に、ベースmichiakiさん、ドラム柏原克己さん、ギター山鼻朝樹さん、キーボード三国義貴御大の4名をベースにして、リードギターにPATAさん(Ra:INで毎年夏にISSAYをゲストに迎えライブをしていました)、ボーカルにZIGGY森重樹一さんをゲストに迎えるという編成。
10時前に克己さんの車が到着、早速セッティングをしていただきます。そして、michiakiさん、朝樹さんがぞくぞくとメンバー入り。
克己さん(原始神母)のドラムキットは前回のとは違うもの。「フロアタムがよく響くのを持ってきた」と克己さん。木胴ですがかなりヘビーウェィトなキット。24インチのバスドラ含めて重厚感溢れるサウンドです。
ギターの朝樹さんはGUNIW TOOLSのレコーディングでエンジニアKoni-youngと出会い、それ以来師と仰いでいるとのこと。今回もFender Blues DeVilleがいい音出してます。
11時過ぎにプロデューサー岡野ハジメさんが、ずぶ濡れでスタジオ入り。なんと今日も自転車で!…おつかれさまです。
11時半ごろにはドラムの音決めも終え、ギター、ベースのサウンドチェックを済ませると、michiakiさんから「じゃあ録ってみようか?」の一言でリハを兼ねたTake 1が11:57にスタート。
そしてテイクワン収録中に森重さんスタジオ入り。約5分後に演奏が終わり、全員コントロールルームに戻って聴いてみる。全員一致で「これでいいじゃん!」ということでこのアルバム初の「ワンテイクOK!」となりました。でも、ここから岡野さんが「ちょっとドラムで試したいことがあるんですが」と克己さんにいろいろな演奏をリクエスト。この克己さんのプレイがまた素晴らしくて、さらに重低域に厚みが出て思い切りヘビーなグルーヴが誕生。「これ上手い人じゃないとこうはならないんですよね」と岡野さんご機嫌です。
そして1時前から森重さんの歌入れに。こちらもTake 1が素晴らしくて、それをベースにどんどん進行。さすが日本を代表するロックンロール・ボーカリスト、全身全霊を込めた歌に痺れます。そしてメインの歌を撮り終えるとmichiakiさんがデモでラインを作っていたバッキングボーカルの録りをどんどん重ねていきます。さらに森重さんから「『Turn the Light Off』ってコーラスがオリジナルにも入ってたよね~」と確かにボコーダーっぽいシンセが入っていた箇所にどんどんハーモニーを加えていきます。
2時半に歌入れも終了。え~と、次は・・・。あれ、歌入れが2時からの予定で4時からキーボードだ、と1時間半も巻いている(押してるの反対)ことに気づき、しばしの休憩タイム。さっそくロビーで恒例の特製ハンバーガーを皆さんに召し上がってもらうことに。
森重さんと岡野さんは先ほどからずっとギター話に花が咲いていて、森重さんがハードオフでいかに手頃でいい日本製 ”Fresher” のギターを探し当てるかを目指していらして「みんな馬鹿にしてましたけど、実はいいんですよFresher。東京ではもう気づいている人が出始めてるんですが、名古屋あたりではまだで、狙い目なんです」と半端ない ”Frsher” 愛を力説されています。
その後、3時半頃に三国さんもスタジオ入り、即キーボードのダビングがスタート。うんうん、だんだんmichiakiさんの言っていたBOWIEっぽい感じが出てきた~! R&Rピアノを弾かせたら天下一品の三国さん、往年のレッドウォーリアーズのサポートでも観客を魅了したあの三国サウンドです!(なお、この日はイエロー・モンキーのツアーサポートの空き日だったそうです)
ふとロビーに出てみるとPATAさんがいるではありませんか! 早速コントロールルームに来てもらって三国さんの演奏をしばし一緒に見守り、キーボードダビング終了で全員参加の記念撮影~。和やかなとてもいい雰囲気です。アンプのセッティングをPATAのギターテックとして今日お手伝いに来て頂いた兵庫さんにしていただいている間に、みんな思い思いに撮影したり話に花が咲いたり。
そしていよいよ愛用のブラック・レスポールによるギターソロのレコーディング。「何も考えてねえよ~」というPATAさんだけど、いざソロを弾き始めたら、数テイクで何とも味わい深いエモーショナルなギターソロが完成。個人的には往年のFreeのギタリスト、ポール・コゾフを思い出してしまいました。
これにて完パケ!と思いきや、ここでmichiakiさん、岡野さんからギターのフィードバック音のリクエスト。ここで活躍していただいたのが兵庫さん、PATAのギターをアンプのすぐ近くで鳴らしてピーとかキーンとか長い音のフィードバックを幾つか試してもらいました。
そして19時頃にすべてのレコーディングが終了。ラフミックスも20時には終わって、終始喋り通しだった森重さんと岡野さん含め、全員なごり惜しくも帰路に着いたのでした。
そしてこの日はレコーディングの合間に森重さん、michiakiさん、朝樹さんからコメントを頂戴することができました。
Text:DZTP イトハル Photo: 辻砂織、Naoko Inoue、イトハル
▽以下コメント▽
森重樹一さん
ISSAYにはグラマラスで妖艶で退廃的で浮世離れしているパブリックイメージがあると思うんでけど、俺が知っているオフステージのISSAYはとても気さくだし、カジュアルでフレンドリーな優しい男。「灯りを消して」はそういう彼のもっと人間的な部分に触れられてアピールできるような曲だと思ったんですよね。
なぜかというと、この曲には男性と女性、Man To Womanみたいな関係性がテーマとしてあるんじゃないかなと。それを彼の言葉の美学で綴っているんだけど、内容はどんな男性にも通じることで、オフステージの“普通の男のコ”の部分はISSAYにも俺にもあってーー。中にはISSAYみたいなタイプを遠巻きに見る人もいると思うけど、そういう人たちにも絶対、アピールするものを持っている曲だよね。俺もかなり偏った人間だとは思うけど、より多くの人が受け取れるような曲を作りたいという想いがあるので、michiakiさんやスタッフの方が「灯りを消して」を推してくれたんじゃないかなって僕は捉えているんですよね。
自分以外の誰かの曲を歌う時にはちょっとした不安が付きまとうんですけど、この曲を聴いてISSAYのことを思い出した時に“この曲なら、僕が歌わせてもらう意味もあるし、歌いたいな”って非常に前向きな気持ちになれたんですよね。僕が根底に持っているものと彼のメッセージは何も変わらないものだから。
ASAKIさん
「灯りを消して」では当然、ブリティッシュ寄りの音をビシッと入れていこうかなと。「我が家か?」ぐらいのリラックスした環境で弾かせてもらいました。
エンジニアの小西さんとはグニュウ(GUNIW TOOLS)の頃に一緒にレコーディングさせてもらって、26年ぶりの機会だったので、成長した姿を見せられたらいいなっていう気持ちもありつつ。
DER ZIBETはガキの頃、札幌で聴いてましたからね。お小遣いなかったのでレンタルレコード屋で『HOMO DEMENS』を借りてきて、カセットにダビングして何度も聴いてましたね。他のバンドと一線を画していたし、当時は「日本にこういうバンドいるんだ」っていうのがまず、衝撃でしたよね。
森重さんとは何回かお会いしたことはあるんですが、レコーディングするのは初めてなので、ものすごく楽しみにしていて、「こういう機会がないと一緒にできなかったのかな」って嬉しいですよ。夢のようだし、高校生の俺に「見てるか?」って言いたい感じですね(笑)。
とはいえ、いちばんはISSAYさんの追悼っていうことがなければ、ホントはよかったんですけどね。ああいう憂いのあるボーカリストはそうそういないから「こんな人の横で俺、ギター弾けるんだ」って。毎回、緊張と嬉しさがあって、全力出すしかないなって。でも、ISSAYさんがこういう機会を与えてくれたのかなと思います。心からISSAYさんの人徳だなって。
michiakiさん
「灯りを消して」はまず、DER ZIBETのオリジナルを聴いてISSAYのことを思いながら、徐々にアレンジしていったんです。作業するに当たって彼の歌をコピーすることから始めたんだけど、メロディがかなり不思議な世界でなかなかコピーできないんですよね。これまでデヴィッド・ボウイ+グラムの曲をステージで一緒にカヴァーしてきたので、今まで付き合っていたISSAYの違う部分を見せてもらったなという想いがありましたね。
でも、アレンジする上でISSAYと一緒にやってきたボウイとかT.レックスはもちろんエッセンスとして絶対に入れたかったので、そこは大事にしてます。オリジナルより、少しエッジを効かせたかったのとISSAYとここ10年ぐらい一緒にやってきた我々のルーツ音楽を取り入れてやりたいなというのがあったので、アレンジする時には常にISSAYがいた感じですよね。何しろ、カッコよくしたかったのがいちばんですね。
トリビュートでは2曲参加させていただきましたが、ユカイくんも森重も素晴らしいですね。こんなに上手いんだってすごくスムーズに。アレンジした曲をレベルアップそてくれたというか、2人とも素晴らしいです。
コメントTEXT:DZTP(H)
以下追記分
森重さんのインタビューには続きがあります。こちらも是非お読みください。https://motion-gallery.net/projects/DERZIBET/updates/51300
さてひとつウラ話。朝樹さんがご自分のアンプを土屋昌巳さんのレコーディングに貸していただけるとのことで、この日のレコーディング終わりにお預かりして、「LOVE SONG」レコーディング終了日の夜に土屋さんと一緒にご自宅まで返却に伺いました。朝樹さんには「土屋さんに鳴らしていただけるなんて光栄です」とおっしゃって頂けましたが、本当にありがとうございました!
山鼻朝樹さんに感謝を込めて、最新アーティスト写真をご紹介!
その後「灯りを消して」のMIXはKoni-youngが4/28にversion 1を作ってからミチアキさんと岡野さんとのやりとりが始まり、5/9にversion 4が完成、FIXとなりました。
ミチアキさん、朝樹さん、三国さん、克巳さんの演奏はDISC2に3曲収録、本当お世話になりました。ライブもよろしくお願いします!
追記分Text:DZTP イトハル