制作日記 EXTRA 3:森重樹一さんインタビュー
vol. 40 2024-06-27 0
ISSAYみたいなヤツは今後も絶対、出てこない
■森重樹一さん スペシャルインタビュー
――森重さんとISSAYの出会いについて教えてください。
ISSAYのことは僕が ZIGGY を始めるか始めないかの頃に音楽雑誌のポスターを通じて知ってたんですよ。彼がまだ金髪の頃で「わあ、すげえヤツいるな。これはデヴィッド・ボウイ方向はヤツに任せておくべきだな」って(笑)。当時は耽美なポジティブパンクのバンドがいる中、新たなスターが出てきたなって印象だった。初めて話したのはZIGGYとして本格的に活動してから。共通のバンドマンが企画したイベントにISSAY も俺もゲストとして呼ばれて、その時、セッションで一緒になったんです。
――そこで初めて会話されたんですか?
そう。その時に「ISSAY がデヴィッド・ボウイで俺がミック・ジャガーで「ダンシング・イン・ザ・ストリート」(1985年のコラボ曲)みたいな曲やったらカッコいいじゃん?」 っていう話をしたのを覚えてますね。ISSAY がああいうスタイルで出てきてくれたから、だったら僕は違う世界での一番星を目指すっていう気持ちになったし、常にシーンを牽引している男という見方をしていた。
――よきライバルのような存在だったんでしょうか?
違うからこそ、わだかまりを感じずにお互いが歩いている道をちゃんと認め合えるような関係。僕は彼に対してすごくリスペクトの気持ちを持っていたし、然るべき運命を持って生まれた人だよね。ISSAY は自分の美しさをロックの野性的な方向に寄せていくことをしていたし、僕は自分の中にある野性的な部分をノーブルでジェントルな方向に寄せようとしていた。でも、その根底にあるのは2人ともデヴィッド・ボウイやイギー・ポップに影響を受けているっていう。だから、スタート地点や角度こそ違え、似通ったところがあるんじゃないかって気がしてるんだよね。僕は ISSAY のことをとっても好きだし、彼みたいなヤツはいない。今後も絶対に出てこないと思う。
――DER ZIBETトリビュートアルバム『ISSAY gave life to FLOWERS』では「灯りを消して」(アルバム『HOMO DEMENS』収録)をカヴァーされていらっしゃいます。
まさか、ISSAY の歌を自分が歌わせてもらう機会が来るなんて思わなかった。ISSAY も含めて 21 世紀まで踏ん張ってきた連中は、みんな同胞なんだよね。戦友っていうか、弾よけながら、なんとかやってきた。俺も60 になって「これでいい」っていう結論は出てる。もちろん、この先もトライはするし、今回のトリビュート企画もひとつのトライ。とてもいい体験だったよね。久しぶりにmichiakiさんのベース聴いたけど、流石の流石だね。ISSAY のことを愛している michiaki さんが「灯りを消して」をアレンジしてくれたことに俺はのっかるだけだよ。「今までしてきたことをそのままやればいいんだね」っていう。それが信頼だよね。こんなこと言うとおこがましいけど、残った者はやらなきゃいけないんだよ。
――自分がやるべきことを?
そう。ISSAY はみんなの中で綺麗なままでいてくれるからね。これは神様が選んだ選択で、ISSAY はワークを終えたから「天国においで」ということだと思えば俺はこの出来事は後ろ向きには考えない。残された者にはまだワークがあるんだよっていう。もちろん、喪失感はある。でも、アイツのことを片時も忘れず応援してくれていた人たちのことを考えたら、俺がグチグチ言ってる場合じゃない。だから、俺はやるべきことをやる。もし、あの世とか天国があるなら、このロクでもない連中を彼が見守ってくれてるはずだよ。ISSAY のことを愛した(BUCK-TICKの)あっちゃんもーー。ISSAYに影響を受けてないヴィジュアル系のシンガーなんかいないはずで、突出した美意識と世界観を持っていたアイツは間違いなく一番星だから。俺が一切口を挟むことなんかできないぐらい独壇場。彼がいなかったら、多くのシンガーはおそらくどこに行ったらいいかわからなかったはずだよ。
ーー森重さんとISSAYのデュエットは聴きたかったですね。
「ダンシング・イン・ザ・ストリート」を俺は天国でアイツと一緒に踊るよ。「ダンシング・イン・ザ・ヘヴン」でいい。ISSAY みたいに最後まで美意識を貫いて生きた連中を俺は好きで仕方がない。ひよって自分を変えていったり、強い者に媚びたり、おもねったりするのは俺は嫌だから。それがロックだって俺は教わってるし。少なくとも michiaki の兄貴とかからね(笑)。とにかく、この作品がISSAY が天国で喜んでくれるようなものになってくれたらいい。ISSAY を愛した人たちにとって不愉快なものにならないように。それだけだよね。
Text:DZTP(H) Photo:辻砂織