制作日記 EXTRA 2:小林祐介さんインタビュー
vol. 38 2024-06-25 0
「孤高なんだけど、本当の意味で優しい方だと思います」
■小林祐介さん インタビュー
――小林さんが DER ZIBET の音楽と出会ったのは?
10 代の頃、僕が L’Arc~en~Ciel とか好きなこともあって、共通の趣味を持つ友達が DER ZIBET、THE WILLARD、BUCK-TICK らが入っているレジェンドたちのベスト・セレクションを貸してくれたんです。中でも DER ZIBET には惹かれるものがあって、本格的に聴き始めたのは上京して大学に入ってからですね。自分の PC を買って、初めて ISSAY さんの風貌を知るんですが、貴族とか魔王みたいで「こんな人だったんだ!?」って。そこからいっきに魅了されてしまったんです。
――高校生の頃から聴いてらしたんですね。
その後、2005 年に The Novembers というバンドを始めたんですが、手塚眞監督に MV を撮っていただいたことがあって、その時、監督に「小林くんの曲を聴くと DER ZIBET を思い出すんだよな」って言われてーー。「実は好きなんです」という話をしたら、いろいろなエピソードを教えてくれて、より親近感が湧いたんです。それと土屋昌巳さんに EP『Elgance』(2015 年)をプロデュースしていただいた時に ISSAY さんの人間的な深さ、懐の広さをお聞きして、聞けば聞くほど「いつかお会いしたい」ってずーっと思っていたんです。結局、お会いすることは叶わなくなってしまいましたが、「ISSAY さんと会わせたい」って言ってくださる方が何人もいらっしゃったので....寂しいですね。
2024.4.26 土屋昌巳さんと (at INFANTRON studio)
――小林さん自身、思春期に学校で傷ついた思い出があるそうですが、そんな時に ISSAY の歌詞は刺さってくるのではないかと思います。
はい。僕の中で“不良”と“ヤンキー”には明確な違いがあるんですが、中でもDER ZIBET には随一の“不良感”があったんです。
――その違いをぜひ教えてください。
ヤンキーの方々はフィジカルなんですが、不良の方々は知的で孤独。僕にとって連帯するヤンキーと孤独な不良は全然違うんですよ。DER ZIBET とBLANKEY JET CITY が好きだったのはある意味、同じ理由。文学的で不良の音楽だったからなんです。
――個人的に非常に共鳴します。
その文学性、知性に憧れていたんです。土屋さんも櫻井さんも僕にとっては“魔王”なんですが(笑)、ああいう方たちは孤高で高次元で言語を超越して人と何かを分かち合える領域にいるんじゃないかって、そういう憧れが芽生えたんです。僕の世代はそういう存在というよりも親近感が湧く兄貴みたいな人が人気者だったのですが、僕が尊敬している魔王たちのような破格の存在が今後、生まれてくるのか、すごく興味があります。
――多感な小林さんのアンテナに引っかかったのがそういう方たちだった。
そうですね。孤高なんだけど、本当の意味で優しい。
――小林さんが影響を受けた音楽もデヴィッド・ボウイ、ザ ・キュアー、ルー・リード、ジョイ・ディヴィジョン、ジーザス&ザ・メリーチェインなど、同世代はあまり聴かれないような洋楽ですよね。
はい。同世代が共鳴した音楽というよりも L’Arc~en~Ciel が青春時代に聴いていた音楽に傾倒していったんです。スミスだったり、エコー&ザ・バニーメンだったり。ニューウェーヴやポストパンクですね。そういうこともあって、ISSAY さんや櫻井さんにシンパシーを抱いてしまうんです。「僕もあの時代にいたら、絶対、友達になれたのに」というもどかしさがあります。
――小林さんが書かれる歌詞もまた死生観について深く考えていないと出てこない言葉たちだと感じます。
そうですね。僕は尊敬している方たちに表現を通して「どんなネガティブなものでも、綺麗なものとして世の中に還元することができる」って言われた気がしたんです。ヒットチャートで流れている音楽も素晴らしいんですが、感謝の想いだったり、ポジティブな歌詞が恩着せがましいというか、僕はちょっと窮屈に感じていたんですね。
――ええ、ええ。
大人になると自分が青春時代に悩んだことは、些細なことだったと気づく瞬間もあるんですが、リアルタイムの10代にとっては恋愛も友情も大きな出来事で、僕は未だにそう思ってるんです。そういう過去を「まぁ、まぁ」って言えてしまうのは大人になって心にぶ厚い皮ができてしまっただけで、何かをキッカケに世界が変わってしまうぐらい人間は際どいバランスで生きていると思うので、僕らエンターティナーは「そんな些細なことで悩むなよ」という表現とは真逆なことをしてあげなきゃっていう気持ちもあります。傷や闇を否定するのではなく、「それでも世界は美しい」って言ってくれる先輩たちの音楽は僕にとっては宝物です。
Text:DZTP(H)
2024.4.26 岡野ハジメさんと (at INFANTRON studio)
以下追記分
小林祐介さんは「LOVE SONG」でベースを弾いていただいた高松浩史さんらとともにThe Novembersとして活動中。https://the-novembers.com/
またもうひとつBOOM BOOM SATELLITESの中野雅之さんとの二人組THE SPELLBOUNDのフロントマンとしての顔もお持ちで今年はフジロックにも出演が決定しています。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。https://the-spellbound.com/
今回ご参加いただいた全ミュージシャンの中で最年少、となりますが既にThe Novembers結成から19年のキャリアをお持ちです。小林さん、高松さんともに8/4のISSAYトリビュートライブにもご参加いただけることになり、当プロジェクトとしては次世代にDER ZIBET / ISSAYの音楽を繋げていくという意味で、とても意義深いことだと感謝しております。
是非小林さんの今後の活躍にご注目ください。
追記Text:DZTPイトハル