代表エピソード:『紙ナプキンの夢』
vol. 12 2014-02-13 0
この連載では、「力もない」「お金もない」「夢しかない」のCATiC代表 教来石小織(きょうらいせき さおり)が夢を綴ります。
↑小織さんごめんなさい
『紙ナプキンの夢』(代表エピソード)
「カンボジアに映画館をつくりたい」——―
事務員としてデータ集計をする現実から
遥か離れた衝動に襲われたのは、
死ぬと思い込んでいたほどに、
心身ともに深く弱っていた時だった。
カンボジアに行ったこともないのに
「カンボジアに映画館をつくりたい」。
心の底から湧いてきたその夢が、弱っていた私を突き動かした。
「夢」。
目に見えない抽象的な、
時に安っぽく感じるようなそれは、
時に絶望から人を這い上がらせる力を持っている。
まずはカンボジアの情報を得なければ。
その日のうちに、
カンボジアに行ったことがありそうな友人たちにメールを送りまくった。
その中に、石川君がいた。
社会人勉強会仲間の石川君は、
旅が好きで、
バックパックひとつでしょっちゅう海外を飛び回っている。
あいにくと石川君はカンボジアに行ったことはないと言う。
次に石川君に会ったのは、
社会人勉強会のミーティングの席だった。
レストランで行なわれたミーティング。
一番端の席、
目の前に座った石川君は、
〈カンボジア?〉と書いた紙ナプキンを差し出してきた。
サラサラと書いて返した。
〈行きたいんです。カンボジアに映画館をつくりたいのです。下見に行きたいのです〉
石川君は「ほう」という顔をした。
数日後、石川君を呼び出して、改めて夢を語った。
石川君は、下見に行くなら上映もしてくればいいと言った。
ほどなくして彼は、今の団体を立ち上げた。
言うなれば、
私はただの頭のおかしな女だった。
ただのバカの夢に、色をつけてくれた人がいた。
多くの方とご縁をいただくまで形にできたのは、
石川君の力だ。
そして、その後集まってきてくれた
自慢したくなるほど優秀な仲間たちの力だ。
応援してくださる優しい方たちの力だ。
バカは今、確実に自惚れている。
あの時紙ナプキンに書かれた夢は、
もう私一人の夢ではないのではないかと。
(……二人とも字が汚い)
過去の記事
■第一回: 代表エピソード:『始まりは腹痛と共に』
■第二回: 代表エピソード:『紙ナプキンの夢』
■第三回: 代表エピソード:『母と、一周年』