【応援メッセージ】流れの電気工事技術者・SDKさん
vol. 34 2019-02-19 0
『悶え神との出会い』
人間畑と海があれば生きていける…
この言葉を知ったのは今なお建設が進行中の青森県大間原発のことを調べていた時だ。
原子炉予定地として収用予定の猫の額ほどの畑。そこを頑なに守った熊谷あさこさんの話。その頑なさは亡き夫が放った一言だった。
チェルノブイリの老婆に「土と人間の距離感を見直せ」と託されたような気分になり畑をやり始めていた自分は、元はと言えば紀州の漁師の血も混じる。この言葉に反応しないはずはない。足は自然と本州の最北に向かった。
マグロの街で全国区になった青森県大間はバイク乗りにとっては最短北海道フェリーの発着港でもある。バイクで北を目指していた時は何度も通りがかったこの街に原発建設が始まっているなど知る由もなかった。
あさ子さんが守った畑は娘の厚子さんが母の遺志を受け継ぎ「あさこはうす」という小屋を建て守っている。収用地の中の未収用地「あさこはうす」に向かうには有刺鉄線に囲まれて監視カメラが放列する世にも奇妙な砂利道を行く。権力というものがそのまま風景になっているかのような物々しさの中、空にはカモメがのどかに舞う。原発の地はどこも風光明媚に権力の香りが漂う。
ここ、大間で毎年夏に大マグロックなる反核のロックフェスが開催されている。それも当て込んでの北行だった。建設中の原発建屋を望む、海岸段丘の斜面で行われるフェスのクライマックスは夕日を背負って行われる。のんびりした中にも全国から集まった原発に疑問符を抱く人々の意思は熱い。
私はそこで一人の男と出会った。
同い年で酒飲み。意気投合し交流が始まる。工具を抱えて腕一本で全国の原発をくまなく旅した男と福島の写真を抱えてボロバンで旅する男の出会だった。
福島の惨状を見て彼は言う
「俺の人生はなんだったのか、、、」
人生を賭し、生きる支えだった一本の腕は、福島の事故でもろくもへし折られたような気がした。原発で飯を食っていかないといけないのに心中の声は「原発はもういらない」と叫ぶ。消えない葛藤が心の中に芽生えた。
それは私とて同じ。
チェルノブイリを訪問してから湧き上がった「一枚の写真で世界を変える」的青臭い理想は福島事故で吹き飛ばされ、焦燥と無力感に襲われていたのだから。
震災や原発事故の当事者の悲しみには比べようもない些細なことなのかもしれないが、当事者ではない当事者が震災後たくさん生まれたような気がする。
「悶え神」
水俣では自分には直接的な関わりのない不幸ごとを我が事のように嘆き悲しむ人のことをそう呼んだと、知ったのは震災後のこと。悶え神たちの加勢によって水俣病は大きな社会運動へと動き出す。
東日本大震災の後にも「悶え神」はたくさんいることがあらわになった。
「私はなにをすればいい?」
「悶え神」の加勢はいくつもの「もやい」となって、あるものは国民目線の政治家となり、あるものは地道に土壌測定をし、あるものは愛犬愛猫の救護に向かい、あるものは支援活動の実働部隊に加わり、あるものは路頭に迷う母子に手を差し伸べる。
私たち表現者ができることは、薄れていく震災&原発事故の記憶を繫ぎとめ、さらに我々が進むべき新しい価値観創造のゆりかごへのイメージの橋渡しである。そしていうまでもなくその活動は全国の「悶え神」のみなさんの力ぞえで成り立っている。今回のクラウドファンドももちろんそうだ。ここを借りて心から感謝をいたします。
そして悶え神の一人、SDK、応援メッセージ、ありがとうね!
(中筋 純)
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私と写真家 中筋純との出会いは2016年の7月大マグロックの時だった。その後機会があって彼の写真展に赴き生の作品に触れた。
浪江の街が再現された長尺のストリートビュー写真の中に電気工事会社の名前を見つけた時、私がかつて携わった六ヶ所の核燃料サイクル基地でケーブル敷設の応援に来てくれた大熊町の電気工事会社の被災した親方の事を思い出した。
息も出来ないくらいの 衝撃を覚え15分くらい休憩取ってから再度展示を観たが… やはり所々で写真が私に訴えかけて迫ってくる。福島もチェルノブイリも… 写真を観て疲れた経験は初めてであった。それだけある意味重い写真なのだ。
私は3.11以来原発反対に転じました。
それまでは六ヶ所の核燃料サイクルプロジェクトのメンバーとして建設工事の完成させるために頑張った。地元の工業高校卒業後、当時日本で一番大きな東電系電気工事会社に就職し9年東京都内のビル設備の 現場監督、その後10年は六ヶ所村の核燃料サイクル基地の中心建物の 建設電気工事の現場監督などをした。
東京在勤時は東電の各部署の建設工事改修工事を多く経験したり、六ヶ所村のプロジェクト携わったのも、今となっては私の心をモヤモヤさせる。 だって福島の事故までは誇りを持って仕事をしてたのが…今までの私を否定する様に反原発になったのだ。
複雑な背景は今でも続いている。
しかしながら我々は福島の事故から現状を学ばなければならない。 私の住む青森県は大間原発、東通原発、六ヶ所村の核燃料サイクル基地事故と隣り合わせなのだ。
最後になりますが 、福島の事故のメッセージを伝える今回のもやい展に参加される作家に敬意を表しますと共に支える縁者の皆様に感謝いたします。
盛会をお祈りします。
流れの電気工事技術者 SDK
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「もやい」それは、荒縄の強固な結び。3.11から8年、福島原発事故と向き合ってきたアーチスト達の個々の表現が金沢21世紀美術館で結ばれます。絵画、彫刻、写真、生花、造形、詩歌……福島の現実と命の輝きがあなたを包みます。
一人でも多くの方にこのプロジェクトを知っていただくために、引き続きのご支援・そして周りの方への拡散を、何卒よろしくお願いいたします。
https://motion-gallery.net/projects/2019moyai_kanazawa
★もやい展スケジュール★
場所:金沢21世紀美術館 ギャラリーA(石川県金沢市広坂)https://www.kanazawa21.jp/
日時:2019年3月5日(火)〜10日(日)
5−7日/10時~18時 8−9日/10時〜20時 10日/10時〜17時
入場料:100円(各種免除規定あり)