ジャーナリストの大谷昭宏さんからコメントが届きました!
vol. 50 2022-04-14 0
監督の寺田和弘です。5月3日の石巻での完成試写会ですが、まだまだ、席に余裕があります。ゴールデンウィーク中ですが、午後からは原告遺族による第2回目の語り部の会も行いますので、来ていただければ嬉しいです。
5月3日、石巻・完成試写会申込みフォームは、
です。さて、ジャーナリストの大谷昭宏さんからもコメントを頂きました。
2時間余りの映画の間、何度、「負うた子に教えられて」という諺を思い浮かべたことか。諺では、そのあとに「浅瀬を渡る」と続くのだが、大川小学校の子どもたちの親は違った。子どもたちは背負われた親の背中から足を取られそうな急流渦巻く深みばかりを指差すのだ。しんどいけど、石を払いのけ、足を踏ん張って、深みの底に目を凝らさないと、本当のことは見えて来ないよ、と。
親たちの耳には、子どもたちの「先生の言うことを聞いたのに!!」という叫びが、こだまする。
だが実際は行われていなかった避難訓練。廃棄された聞き取りメモ。いつの間にかねじ曲げられた「山の方に逃げよう」という子どもの証言。市教委に、県に、(文科省がお膳立てした)国に裏切られた親たちに背中の子どもが指差したのは、裁判という長く、しんどい道だった。
たった2人の弁護団。その裁判でさえ、1審は勝訴とはいえ現場の教師たちに責任をおっかぶせた通説判例。親たちを失望させるだけだった。
だけど、ついに深みの底にキラキラと光るものが見えてくる。2審仙台高裁が下した控訴審判決は、教育現場に責任を押しつけることなく、市、県、国の組織的過失によって子どもたちの命が奪われたと断罪。親たちにとって、まさに「胸に刺さる心ある判決」だった。上告審、最高裁もこれを支持、判決は確定した。
子どもたちの「先生の言うことを聞いたのに!!」の叫びに、裁判所が出した答えは「学校が子どもの命の最後の場所になってはならない」だった。この言葉が広く深く、永遠に根付いてほしい。
あらためて、悲しみのどん底から負うた子の指差す冷たい深みに足を踏み入れ、闘った親御さんに、たった2人の弁護団に、心から敬意を表したい。そして1人でも多くの方にこの映画を見てほしい。
私事になるが、映画の寺田和弘監督とカメラマンの藤田和也さんは、十数年前まで続いたテレビ朝日の情報報道番組「サンデープロジェクト」で一緒に現場を走りまわった仲間だ。おかしな政治に切り込み、冤罪事件や強引な公共事業、安保法制など危ない法案…取材対象は多岐に渡った。番組がなくなって久しいのに、いまも折にふれて「サンプロが続いてくれていたら」と言う声を聞く。
早々と軸足を別の番組に移してしまった身には偉そうなことを言えた義理ではないが、あのころまだ若かった2人が、こうしてサンプロの息づかいをいまに伝えてくれていることに、若干の後ろめたさを抱きつつ心から感謝している。
大谷昭宏(ジャーナリスト)