みなさんの感想も聞かせてください!
vol. 30 2021-11-30 0
監督の寺田和弘です。先日、発売された「水底を掬う」の感想を早速いただきました。
水底を掬う 河上 正二(著) - 信山社出版 | 版元ドットコム (hanmoto.com)
本読みました。やはり、すごい意味のある判決ですね。新聞の取り上げに対して、ネットのひどい反応(ヤフーニュースのコメント欄)が出てくる根拠がよくわかりました。判決の意義を踏まえた記事を書かないと反発が広がる、賛同者も広がるが2極分解してしまう。しかし、判決の意義は、これから日本中の子どもたちを命の危険から救うことになる。批判している人たちやその家族にも恩恵を与えるものです。さらに、自然災害にとどまらず、1人1人が自分の組織と向き合って感じていることを問題提起していく。何かが起きてからでなく、起きる前に向き合っていく。そんな勇気と、理論を示してくれる判決です。遺族の怒りの原点となった、隠ぺい。でも隠ぺいを目の当たりにしてご遺族の闘いが公共性を獲得したと思います。ズームの交流会で「いじめを教育委員会が隠蔽する様々な報道をみて、頑張らないといけないと思った」というご遺族の話がそのことを物語っています。そして判決がそのことを象徴しています。過ちを認め、組織的に解決していくことと、組織として責任を回避するために過ちを隠蔽すること。この2つがぶつかり、その結果、遺族のみではなく社会が、大きな反省と方向性を司法と言う場で獲得することができた。問題はこの成果をわかりやすく丁寧に広げていくこと、これはもうご遺族の仕事ではないと思います。この判決を知ったものの責任です。今度は私たちが子どもたちとご遺族の代理人にならなければなりません。この本と映画がそのことを、後押しし実現していくと思います。日本中の親たちが納得する映画を作ってください。見た人たちが立ち止まり、自分を振り返り、自分を見直す映画ができるといいですね。いい本でした!
水底を掬う (大川小学校津波被災事件に学ぶ) | 河上 正二, 吉岡 和弘, 齋藤 雅弘 |本 | 通販 | Amazon
また、ご支援いただいている方から以下のような感想も頂きました。皆様も感想をお寄せいただければ助かります。(許可を得たもののみ公開しています)
語り部の会、お疲れさまでした。「いのちの記録」の動画、拝見しました。佐藤美広さんの言葉で、高裁判決が出た後も、高く評価する見解と疑問を持つ見解とに分かれ、この判決の意味がどうだったのか、というお話がありました。確かに、抽象的に理論的な面だけを見ると、きちんと注意を払っていれば被災を防ぐことができたというのは、後付けの理屈のように見えます。しかし、大川小の裁判の場合、事実に照らして見ると、何度も第三次避難場所を決めるチャンスがありながら、それを漫然と見逃してきたこと、そして校長等において、本当に校庭で大丈夫なのかという危惧が実際に感じられていたこと、したがって、この悲劇は防ぐことができたことが明らかにされました(そのことは、遺族としては辛いことですが)。この事件に限って言えば、理屈の問題ではなく、事実の説得力が決定的であったと考えています。
そして、最近『みすず』で吉岡先生、斎藤先生が書かれているところによると、遺族が自ら動いて証拠を集める、それによって、外部者である弁護士だけでは集められない証拠を集めることができたということでした。ですから、この判決の意義は、遺族自身が事実を明らかにしようとする努力とその成果を、裁判官が曇りなく直視して判断したことにあると考えています(もっとも、一番知りたいこと、50分間の校庭で何があったか、なぜ山に逃げられなかったかということは、残念ながら明らかになりませんでしたが)。
そして、問題は専門的な知識の要否ではない、災害防止のための組織的な要請があった場合に、漫然と「作文」をして済ますのではなく、リアリティを持って取り組むことこそが大切だということであり、判決の理論以上に、遺族自身が明らかにした事実をしっかり見ることによって、防災部局にいる人、学校の管理職や教育委員会の人、現場を担当する教員、また子どもの保護者たちが、それぞれ、自分は何をするべきかを考えることが大事だろうと思っています。