スッポン、スモール、ウナギ。
vol. 13 2021-06-22 0
みなさん、引き続きの多くのご支援とご協力、誠にありがとうございます。
サポート役の木股です。
この猪ノ穴プロジェクト掲載も残すところ10日を切りました。
そんな最中、先日、猪ノ穴設営予定である三重県松阪市の杉山さんのもとを訪れ、
このプロジェクトのキーワードでもある”野遊び”をしてきた一部始終を今回はご紹介します。
『猪ノ穴完成後はこんな体験ができる場所になるんだ』
と知っていただければ幸いです。
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梅雨入り宣言が出てすぐでしたが、三重は快晴。
杉山さんのお宅に到着して、犬舎を覗いてみると、前回見たときよりも一回り体を大きくしたこの子がいました。
目の周りの隈取りのような模様が濃くなっている、気がする。
こちらの様子の探り方や、近づき方がちょっと独特なおもしろい子です。
杉山さんにそんなことを伝えると、
『水をまったく怖がらない。不思議なやつやな』と話していました。
人と猟犬、猪狩りにおける両者の関係性や、猟犬にまつわるお話はとてもおもしろいので、興味のある方はぜひ聞いてみてほしいです(ちょっとマニアな話に逸れました、すいません)。
アイスコーヒーをいただきつつ、そんな話をしていると、足元の日向と日陰の間をアリンコたちが行ったり来たりしていました。
今回の野遊びの本命は”うなぎのひっかけ釣り”だったのですが(アップデート用の撮影はついで...というのは内緒)、それは夜に行くとのことで、日中はスッポンとスモール(コクチバス→ブラックバスの亜種のこと)を狙いに行くことにしました。
杉山さん宅の大きな水舟に泳いでいるオイカワをスモールの生餌として使い(杉山さん宅の敷地内には実にたくさんの生きものがいます)、スッポンには鯖の切り身を。
前回お邪魔したときは、アメリカザリガニを生餌にスモールを釣りましたが、今回はオイカワ。
鯖の切り身には塩をまぶして身を締めると崩れにくくなる。
ひとつひとつのことに意味があって、それを知るだけでも個人的にはかなりおもしろいです。
櫛田川に向かいます。櫛田川の透明度は抜群で(真夏に飛び込んで泳ぎたくなる)、水中を泳ぐコイやスッポン、ニゴイ、そしてスモールの魚影が肉眼で見えます。
杉山さんは上から川を眺めて、
『おった』
と目的にしていたスモールを見つけます。見つけるまでの早さたるや...
オイカワに針を通し、川岸まで下って、狙うポイントに投げ込みます。
前回来たときは、結局自力では釣れなかったので、再挑戦です。
狙ったポイントよりずれましたが、生餌が着水するとともに、水中に見えたスモールの魚影が動きます。
エサであるオイカワの存在をキャッチした様子。
そこからはあっという間の早さで餌まで辿り着いて、バクリ。
重量感あるスモールが釣れました。このスモールマウスバス、櫛田川流域にもかなりの生息数がいるそうで、僕が住んでいる長野県の川でも爆破的に増えています。
ブラックバスはあまり褒められた味ではないようですが、このスモールはかなり美味しいです。
淡白でクセのない肉厚の白身魚で、フライや竜田揚げがおすすめです。
そして、次は鯖の切り身を針につけてスッポンを狙います。
上から泳いでいるのが見えたので、そこにダイレクトに投下。
狙いの見えていたスッポンは餌の存在に気づいて近づいてくるも、
何故かつつく素振りを見せてどこかへ消えてしまいました。
杉山さん曰く、
『餌より先に糸に触ってしまったからかな』
とのこと。
と、その直後に下流から別のスッポンが餌に向かって真っすぐに泳いできました。
下流に流れた餌の臭いをかぎつけてきたのでしょう。すごい嗅覚。
ちょん、ちょん、とつついて、バクっと餌を咥えました。
見事、捕獲成功。
その後も、重りをつけた仕掛けを投げ込んで、スッポンが食ってくるのを座って待ちます。
川の流れる音が聴こえるなか、そよぐ風が頬に当たるのを感じ、傾いていく日を眺めながら待つ時間は、なんとも贅沢だといつも思います。
時間が過ぎるのも忘れて、、、
本当に時間のことを忘れていて、気がつけば18時半。
今日はここまで、と帰り際にスモールが泳いでいるのが見えて、
杉山さんが竿を投げる。
直後、『きた』といとも簡単に釣ってしまう達人技。
日が完全に暮れて、真っ暗になったあと、うなぎのひっかけ釣りに出向きます。
使う漁具は、なんと説明してよいのか、杉山さんご自身で考案・自作された特殊漁具。
企業秘密ということで、気になる方はぜひ猪ノ穴へ遊びに。
ホームセンターで防水の懐中電灯を購入して、ウェーダーとヘッドライトを持って、汽水域の川へ車を走らせます。
ウナギが巣穴から出てくるのは、夜で、かつ満潮のとき。
とはいえ、このあたりの条件は絶対のものではなく流動的だそう。
目的地へ向かう車中、頭に浮かんだのは、幼少期に夜にタモと虫かごを抱えて向かったクワガタ採集のこと。と、体の奥底からじわじわ沸きあがる高揚感。
一カ所目のポイントに到着すると、そこは人の生活圏にある用水路のようなところで、足首より少し高いくらいの水位。
その中をライトで照らして注意深くみながら歩き、、、
『おった』と杉山さんがすぐさまウナギを見つけた直後の、捕獲するまでの所作が早すぎて、何が起きたのか訳が分からず、全くついていけませんでした。
『こういう感じでやるんや』と言われましても。
”案ずるより産むが易し”に従い、二カ所目のポイントで挑戦することに。
結果からお伝えすると、
”産むも難し”。かなり苦戦しました。
杉山さんのサポートがあったおかげで、何とか捕獲できたものの。
計7匹(杉山さん5、木股2)を捕り、終了。
難しかったのですが、これまでに経験したことのない文化に触れたような愉しさと面白さがありました。
そしてなにより、天然のウナギを捕ることができた、という充足感。
これもやっぱり、オオクワガタを捕ったときの少年の気持ちとよく似ているかもしれません。
翌日、前夜に捕獲したウナギを炭火で蒲焼にして、食べさせていただきました。
ウナギを捌くのも人生初で、まったく要領を得ません。
杉山さんのウナギ捌きは本当に見事で、その一連の動作と流れには美しさがあります。
ずっと見ていられる。
タレは20年つぎ足しているという秘伝のタレ。
ウナギ屋さん以外でつぎ足しのタレって存在したんですね...。
捌いたウナギの骨や頭を炭火でしっかり焼き付けて、タレのもとに漬け込んでいました。
焼きあがった天然ウナギの身は見るからにふっくら肉厚です。
そして驚いたのは、個体により肉質の差があるということ。
それも食べてはっきりその差が分かるほど、違います。
どのウナギも美味しいのですが、その美味しさにグラデーションがありました。
身のふっくら具合、脂のノリ、味の濃さ。
普段は肉質の良いウナギを見分けて捕っているそうです。これもまた驚き。
その見分け方というのか、外見上の違いを言語化するのは難しいそうですが、
杉山さんの目にはその差が”みえている”のだと思います。
杉山さんのもとを訪れて、野遊びに連れていっていただく度に、
いつも違った学びがあります。
と、同時に同じようにいつも強く再認識させられることがあります。
それは、ぼくたち”人間”が見ているものだけで生活しているこの世界(広く言えば自然界や生物界)が成り立っているわけではないということ。
そして、野に生きる生きものたち(動物も植物も菌類もすべて)は人と同等か、それ以上に高度なレベルで、まったく異なった感知の仕方でこの世界に生きているのではないか、ということ。
杉山さんと野に出て、そこに暮らす生きもののたちの驚くべき生態や能力に触れるたびに、そんなことを痛感させられます。
先日、たまたまyoutubeでこんな動画を見て、思うところがあったので、
みなさんにもシェアして終わりにします。