シェア・拡散お願いします「週刊うたごえ新聞」に加藤木 朗がコラム連載
vol. 19 2015-04-21 0
一般社団法人 和力 理事 加藤木 朗は「週刊うたごえ新聞」に今年1月より1年間、月に1回『とっぴんぱらりのぷぅ』を連載させていただいております。
今回は1月号に掲載しました『睦月のむつけばなし』を紹介いたします。加藤木 朗の連載をお読みになりたい方、うたごえ新聞にご興味を持たれた方は、http://www.utagoe.gr.jp/journal/index.html をご覧くださいませ。
『睦月のむつけばなし』
加藤木 朗
お正月といえばやはり獅子舞。初詣でにごった返す参道で、お囃子に乗って獅子が舞っている景色なぞはまことにおめでたく、お花をつけたくなります。というお客様を当て込んで、まだ二十歳を少し過ぎたばかりの青二才だった私は、劇団仲間数人と連れ立って、東京西部の参拝人が多いことで知られる結構な神社に、獅子頭を片手に、太鼓を背負って足を踏み入れましたのが、指折り数えて今からちょうど二十五年ほど前の正月二日のことでした。
申し遅れましたが、私、加藤木 朗という舞台で芸能をいたしているものです。今回は、浅野 昭利様の後をうっかり引き受けてしまい、あまりのバトンの重さに、すでに次の走者を探している慌て者です。芸能についての正しい知識や、歴史や時代背景は学者先生にお任せいたしまして、私は、地元の方から教えて頂きました芸能を、舞台でお客様にご覧になっていただいております者の立場から、見たり、聞いたり、感じたりしたことを、うたごえ新聞をご愛読下さっている皆様にお伝えしようと、鉛筆と消しゴムを握りしめ、チラシの裏面に向かっています。
さて、話を二十五年前の神社に戻しまして、正月は、劇団員にとって年に一度の書き入れ時と、勢い込んでの大仕事。多くの方に、獅子というものは、厄を祓い福を授ける聖獣であることをご理解いただき、舞をご覧になって頂いた後に、厄祓いさせて頂けるかが、お花の多寡にかかわる一大事でしたので、まずは足止めの曲芸をいたしました。腰や肩の上で逆立ちをしたり、二人でバック転をする曲芸は、岐阜県や京都にみられる二人立ちの獅子の芸(わざ)です。
江戸の獅子のように、頭(かしら)も油単(ゆたん=獅子の体部分の布)も一人で遣う一人立ちの獅子と違い、頭は前被り(まえかぶり)、油単は後ろ被り(うしろかぶり)が遣う二人立ちの獅子の動きは、表情は前被りが頭でつくり、獅子の体を後ろ被りが油単を調整してつくります。
二人で一つの生き物を表現するため、相手の動きの癖、身体の癖を、お互いに理解することが必要です。特にバック転では相手の後頭部が自分のお尻に当てられて、後ろに投げ出されますので、どのタイミングで力を加えてくるか癖の見極めが怠れません。日頃の稽古の成果を出すのはここぞと、下っ腹に力を入れて前被りを天高く放り上げ、その勢いで自分を持ち上げてもらったその瞬間、前被りの後頭部に私の下っ腹からプゥと一発、油単の中にはわたしのくせーが立ち込めたという、正月早々のお粗末でした。
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