上映作品紹介その⑤ 「ニンホアの家」
vol. 7 2018-07-15 0
上映作品その⑤は、昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭2017のインターナショナルコンペティション部門ノミネート作品「ニンホアの家」です。
2014年8月、ベトナム南部ニンホアのとある家。
べトナム戦争で離散した家族の日常を固定したカメラで長く撮影し、写真的アプローチを試みた作品。脚本を担当した、越僑ドイツ人のグエン・フオン・ダンが自分のルーツであるベトナムを、ドイツ人映像作家フィリップ・ヴィトマンとともに捉えた。
ニューヨークを舞台にベトナム家族を描くフィクション「ベトナムを懐う」と対に見るのもおすすめ。こちらも3世代にわたる「家の記憶」が紡ぎ出す家族の物語。
【監督のことば(YDFFカタログより一部抜粋)】
『ニンホアの家』は、ある移民の家族の歴史を、故郷に残った者の視点から描いている。その視点と同様、製作チームとしての私たちの位置づけも特殊なものだった。すなわち、私とグエン・フオン・ダンは、家族集団の中の異物として、そして同時に、異なる生活を送るドイツの親戚の代表者として、国を超えた家族の壊れやすい共同生活に目を向ける。ただ、初めてヴェトナムを訪ねた2005年当時から、私の非力な状況は少しも軽減されなかった。というのも、私は常に言葉を翻訳してもらう必要がありながら、しかし映画の言語へ翻訳する者でもあったから。
(中略)1975年と2014年。ニンホアとボン。ヴェトナムとドイツ。生者の世界と死者の世界。これらの呼び起こされた記憶の弾道の一部を、飛行機であり、原付バイク、電車、手紙、写真、電話、供え物、死者の夢、死者との対話などが担っているのである。