2023.7.17 池袋モンパルナスと裏小樽モンパルナス。
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「裏小樽モンパルナス」という名前を思いついたのはちょうど2年前の夏。「ウラオタルBaza-Art」で展示を行ってくれた奈良美智さんの作品の番を、夜、会場でしながら、この場所を今後どうしたいかビジョンを考えているときでした。ちょうどその直前に読んでいたのが宇佐美承著「池袋モンパルナス 大正デモクラシーの画家たち」でした。
「池袋モンパルナス(いけぶくろモンパルナス)とは、大正の終わり頃から第二次世界大戦の終戦頃(1920年代から1940年代)にかけて、池袋周辺(東京都豊島区西池袋、椎名町、千早町、長崎、南長崎、要町)に存在したアトリエ村(貸し住居付きアトリエ群)と、そこを拠点とした芸術家によって作られた文化圏の呼称。この地域に暮らした画家、音楽家、詩人などさまざまな種類の芸術家が行った芸術活動および熱く語った文化全体もさす。」(wikipediaより)
この本に登場する主な若き芸術家は靉光、麻生三郎、井上長三郎、寺田政明、長谷川利行、松本竣介、丸木位里、丸木俊、そして小熊秀雄…。大正デモクラシーの開放的な空気を享受しながらも坂道を転がるように戦争に向かっていく時代に、前衛たちが自らの表現とどう対峙し、どう生きたかを描いたノンフィクションです。
小熊秀雄に対する興味から読んだこの本から「若き芸術家たちが集まって作る、個性的なコミュニティー」という着想を得て、この場所を「裏小樽モンパルナス」と名付け「アートという表現を通して地域を活性化する拠点」にできないかと考えました。この建物がある梁川通りは歴史的にアンダーグラウンドな(「裏」な)地域で、当時急速な発展を遂げつつあった池袋周辺の「あやしげな」空気に通じるものがあるようにも思いました。また名付け親である小熊秀雄は小樽出身であることから「裏小樽モンパルナス」というネーミングには必然性もありますし、言葉のリズムもいいと思いました。
東京都豊島区は、「池袋モンパルナス」を貴重な文化資産として積極的に活用していますが、そのひとつが「池袋モンパルナス回遊美術館」というアートフェスティバルです。
ご縁があって、このフェスティバルの実行委員長を務めている小林俊史さんに今年の2月、池袋でお会いすることが出来ました。「裏小樽モンパルナス」プロジェクトについてお話しすると「なにか一緒にやりたいですね!」と興味を持っていただき、5月に開催された回遊美術館の企画のひとつとして「池袋=小樽=旭川 共創企画 オンラインミーティング『池袋モンパルナスと、私たちのまちでできること』」を開催していただきました。旭川の「小熊秀雄賞市民実行委員会」の方々にもご参加いただき、3つの街をつないで芸術を通じた街作りについて様々な意見交換が出来ました。
オンラインミーティングを受けて小林さんが7月13日、小樽にいらっしゃいました。前日には旭川で旭川文学資料館などを視察、「小熊秀雄賞市民実行委員会」の方々とも懇談されたそうです。
小樽では裏小樽モンパルナスの建物や、ちょうど開催されていた「私的『三宅悟展』」、小樽のアーチストグループによる展示「THEY展」、小樽文学館などを見ていただきました。
その後の打合せでは、オンラインミーティングで出たアイデアをさらに進め来年の「池袋モンパルナス回廊美術館」で「裏小樽モンパルナス」として企画に参加するという具体的なプランが固まりました。今後詳細を詰め、来年春には皆様にお知らせできるかと思います。ご期待ください!
小熊秀雄が名付けた「池袋モンパルナス」。そこに集った個性的な芸術家たちが放った強烈なパスを受け取った人たちがいろいろな街にいて、連携してさらに次世代にパスを楽しくつないでいく…。そんなワクワクする取り組みに「裏小樽モンパルナス」も参加できることを本当に光栄に思います。