変な一人を、事件に変える二人目を探している。
vol. 4 2026-07-02 0
変な一人を、事件に変える二人目を探している。
クラウドファンディングを始めて、ずっと考えていることがある。
最初に変なことをする人間は、だいたい一人である。
ひとりで小説を書く。
ひとりで出版社を名乗る。
ひとりでクラウドファンディングを始める。
ひとりで「この物語を世に出します」と言い出す。
外から見ると、かなり危ない。
「なにを始めたんだ」
「本当に出せるのか」
「大丈夫なのか」
「また何か言っている」
たぶん、そう見える。
でも、すべての始まりは、だいたいそこからだと思っている。
昔、ホリエモンが紹介していた話として、強く記憶に残っているものがある。元になっているのは、デレク・シヴァーズの有名なTEDトーク「How to start a movement」だ。野外フェスのような場所で、一人の男が突然踊り始める。最初は周囲に笑われている。ただの変な人である。
ところが、そこにもう一人が近づいて、一緒に踊り始める。
この二人目が重要なのだ。
最初の一人は、変な人に見える。
しかし二人目が現れた瞬間、それは「変な人」ではなく「何かが始まっている場所」に変わる。
デレク・シヴァーズは、この最初のフォロワーこそが、孤独な変人をリーダーに変える存在だと語っている。運動は一人では始まらない。二人目が現れて、初めて周囲は「あれ、参加していいのかもしれない」と思い始める。
これは、クラウドファンディングにもそのまま当てはまる。
最初にプロジェクトを立ち上げた人間は、まだ変な人である。
「長編小説を出します」
「独立レーベルを始めました」
「読者へ直接届けます」
「支援してください」
言っている本人は本気でも、周囲から見ると、まだ“踊っている一人目”だ。
だが、そこに最初の支援者が現れる。
その瞬間、場の意味が変わる。
「あ、この人を応援する人がいるんだ」
「この作品にお金を出した人がいるんだ」
「じゃあ、少し見てみようか」
一人目は火打ち石かもしれない。
でも、火を起こすのは二人目だ。
しかも、二人目はかなり勇気がいる。
誰も支援していない段階で支援する。
まだ盛り上がっていない段階で乗る。
周囲が様子見をしている段階で、「私はこれを応援する」と態度を示す。
これは、ものすごく大きい。
有名になってから応援するのは簡単だ。
売れてから「前から知っていた」と言うのも簡単だ。
行列ができてから並ぶのは、ほとんどリスクがない。
でも、まだ誰も並んでいない店の前に立つのは勇気がいる。
クラウドファンディングで本当に探すべきなのは、ただの支援者ではない。
最初のフォロワーである。
「この人、ちょっと変だけど、本気らしい」
「この作品、まだ無名だけど、面白いかもしれない」
「じゃあ、自分が最初に乗ってみるか」
そう言ってくれる人を探している。
デレク・シヴァーズの話では、三人目が現れると状況はさらに変わる。二人ではまだ少し変だが、三人になると群れになる。群れになると、周囲は安心する。もう参加しても恥ずかしくない。むしろ、参加しないほうが置いていかれるように見えてくる。
つまり、運動の始まりは、一人目ではない。
一人目は、ただ踊っている。
二人目が、その踊りを意味に変える。
三人目が、それを場に変える。
四人目から先が、ようやく流れになる。
だから今、私は思っている。
《上陸者》のクラウドファンディングで探しているのは、単なるお金ではない。
この変な踊りに、最初に近づいてくれる人だ。
「それ、見てるよ」と言ってくれる人だ。
「とりあえず乗ってみる」と示してくれる人だ。
小説を書くことは、孤独な作業である。
部屋で一人、誰にも頼まれず、誰にも保証されず、物語を書き続ける。
まだ読者はいない。
まだ本もない。
まだ社会的な信用もない。
あるのは、原稿と、書いた人間のしつこさだけだ。
だから、最初の支援は大きい。
金額の大小ではない。
それは、「この孤独な踊りを見た」という合図だからだ。
変な一人を、事件に変えるのは、二人目である。
そしてクラウドファンディングは、その二人目、三人目を探すための場所なのだと思う。
長編小説《上陸者》、クラウドファンディング中です。
まだ、大きな群れにはなっていません。
まだ、広場の端で一人が踊り始めたところです。
けれど、その踊りに最初に近づいてくれた人のことは、きっと忘れません。
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