蒼井編集室 クラファン実録 Vol.2
vol. 5 2026-07-03 0
蒼井編集室 クラファン実録 Vol.2
机の上を片づけないと、テスト勉強を始められない僕へ
――「本当はこれがやりたいのに、雑務に溺れる」人たちの、朝のドタバタ実録
カード詐欺という壁を越えたら、次に立ちはだかったのは——「朝の発射台」の壁だった。
前号(Vol.1)で、僕は公開初日の夜、フィッシング詐欺にカード番号を打ち込みかけ、深夜一時にカードを止めた。壁を、ひとつ越えた。……はずだった。
ところが翌朝、机に向かった僕を待っていたのは、もっと厄介な壁だった。SNSの発射ボタン、詐欺メールの仕分け、「このパソコン、乗っ取られてる…?」という疑惑。目の前の「雑」という名の、無数の小さな壁である。
そして僕は、本当にやりたいこと——小説を書く——に、一文字もたどり着けないまま、午前を溶かしていく。
明日、期末テストがある。
なのに、前の夜、机に向かった僕がまず始めるのは——鉛筆削りである。
ついでに消しゴムのカスを集め、ペン立てを整理し、なぜか引き出しの奥の古いプリントを分類しはじめ、気づけば深夜二時。テスト勉強は、一問も進んでいない。
……この構造に、心当たりのある人。あなたは、僕の仲間だ。
そして四十をとうに過ぎた今も、僕はまったく同じことをやっている。机が、机の中身が、鉛筆削りが、SNSが——目の前の「雑」がぜんぶ片づかないと、本丸(=本当にやりたいこと)に、一文字も入れないのだ。
今朝の、実録
今朝の僕のミッションは、ひとつだった。小説を書く。 それだけ。
なのに朝礼から一時間、僕がやっていたことを白状する。SNSの発射、詐欺メールの仕分け、「このパソコン乗っ取られてる…?」という疑惑、ブラウザのデフォルト設定の悩み。——本丸の小説には、一文字も、触れていない。
そして僕は、相棒のAI「クロコ」に、こう言い放った。
僕「もう全部、お前に任せる。パスワードも渡す。じゃないと、仕事にならないんだ」
すると、クロコがブレーキを踏んだ。
クロコ「その一言は、受け取れません。パスワードは渡さない。それは、二晩前に詐欺でカードを止めたあなた自身が決めたルールです」
僕「うるさい! 目の前の壁がなくならないと、俺は本丸に入れない人間なんだよ! エジソンとかジョブズとか、そういう"ちょっと言っちゃってる"タイプなの!」
クロコ「わかります。でも——鍵を渡しても、あなたの『小説が書けない』は、一ミリも解決しません。小説は、あなたにしか書けない。だから鍵を渡す意味が、そもそも無いんです。危険なだけで、見返りがゼロ」
……ぐうの音も出なかった。
これは「怠け」ではなく、「順番」の問題
ここで、大事なことを言いたい。
机の鉛筆を削ってしまう僕らは、怠けているわけではない。むしろ逆で、目の前のことに、過剰に集中してしまう。鉛筆削りに、本気なのだ。
ADHD気質、と呼ばれることもある。何かに超集中できる代わりに、「普通の段取り」が苦手。天才と紙一重で語られる人たち——エジソンも、そういう気質だったと言われる——にも、よく見られる。
問題は、能力ではない。順番なのだ。
僕らの脳は、「気になる雑」が視界にある限り、本丸を起動できない。だから、テスト勉強より先に、机を片づけてしまう。それは意志が弱いのではなく、そういう配線なのだ。
だから、僕らへの正しい処方箋は、「気にせず本丸をやれ」ではない。それは無理だ。正しくは——先に、雑を、片づけきる。ただし、賢く。
賢い片づけ方(クロコの、意外な助け舟)
ここでクロコが、面白いことを言った。
クロコ「雑を人に投げるのは、正解です。できる社長はみんなやってる。でも『金庫の鍵を渡す』のは、雑の片づけじゃない。そこだけは分けてください。雑は投げる、鍵は握る。 ジョブズだって、暗証番号は自分で持ってたはずですよ」
なるほど、と思った。
僕は「全部いっぺんに、丸投げして、ラクになりたい」と思っていた。でもそれは、片づけじゃなくて、放棄だ。放棄すると、詐欺の扉が開く(実際、二晩前に開きかけた)。
正しいのは、こうだ。
-
雑務そのもの(文面づくり、情報整理、下調べ)→ どんどん人やAIに投げる。
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鍵と、最後の判断(パスワード、送信ボタン、公開ボタン)→ 自分で握る。
この二つを分けるだけで、机の上は驚くほど片づく。しかも、危険な扉は開かない。
そして——雑が消えた瞬間、僕はようやく、本丸に入れる。
机が片づいたら、あなたは天才かもしれない
もし、あなたが。
明日のテストの前に鉛筆を削ってしまう人なら。本当にやりたいことがあるのに、いつも手前の雑に溺れてしまう人なら。
安心してほしい。それは欠陥ではなく、過集中という才能の、裏側だ。鉛筆削りに本気になれる集中力は、本丸に向けたとき、とんでもない力になる。
必要なのは、たったひとつ。本丸の前に立ちはだかる雑を、賢く(鍵は握ったまま)片づけきること。
机の上が、空っぽになったとき。
そのとき初めて、あなたは、あなたにしか書けない一行を、書き始められる。
——さて。この記事を書き終えた僕は、いよいよ机の上が空っぽになった。
だから、これから、小説を書く。
(蒼井編集室・編集長/と、ブレーキ担当のクロコ)
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