応援メッセージ/登山家・野口健さん
vol. 3 2020-10-23 0
自他ともに認める「落ちこぼれ」だった少年は登山に目覚め、山に居場所を見つけます。
やがて、自分に課した七大陸最高峰に登頂。それが、登山家・野口健さんの始まりです。
エベレストのごみ問題に取り組み、ネパール・サマ村に学校を作る「マナスル基金」、2015年のネパール大地震復興支援のための「ヒマラヤ大震災基金」を立ち上げるなど、第二の故郷ネパールとの関わり合いも深いです。
いま、ネパールもまたコロナに苦しんでいるなか、「いまできることをやる」と前向きな話をされていました。
「withコロナの登山で気を配りたいこと」のポスターに寄せてくださったメッセージを紹介します。
僕自身、3月上旬から7月中旬まで、山に登ることができませんでした。
政府が緊急事態宣言を出した期間は、自粛をしていましたし、その後もすぐに山に戻る気にはなれなかったのです。
仕事もなくなったし、自宅にいる時間が長くなりました。4~5月と9~10月に予定していたヒマラヤ行きも中止になりました。「年末になれば、遠くに旅ができるのだろうか」「来年になれば、ヒマラヤに行けるのだろうか」と考えながらも、どうしても気持ちが内側に向いてしまいます。
皆が辛い思いをし、気持ちがギスギスしていた時期だと思います。僕も疲れてしまいました。
7月下旬、やっと山に行くことができました。行先に選んだのは、八ヶ岳連峰にある天狗岳です。僕が、人生において初めて登頂した山、それが天狗岳なんです。もやもやとした気持ちのとき、「原点に戻ろう」と思い立ち、天狗岳に向かいました。
あいにくの雨でしたが、ものすごく気持ちがよかったです。普段だったら、雨のなかを登るのは憂鬱になりますが、雨に打たれながら、マイナス思考だったいろんなことが、洗い流されていくのを実感したのです。
山頂に立ったとき、YouTube用の動画を撮るとスタッフがカメラを回したのですが、僕はそのとき、自分の気持ちを言葉にすることができませんでしたね。「やっぱりこれなんだ、これだよ」と、そんな言葉しかでてきませんでした。
新型コロナウイルスの感染拡大は、皆を追い詰めました。
人は、誰かが窮地に立たされたとき、手を差し伸べます。けれど、今回は誰もが窮地に立たされたわけです。それに、感染予防のためには、人と人との接触を減らさなければなりませんでした。コロナは、人と人との繋がりを断とうとしたのです。これは、とても辛いことです。
けれどだからこそ、こんな時にこそ、人は自然と接する時間が大事だと思うのです。
僕が、天狗岳に登って心が洗われたように、皆さんも山にかえることで、気持ちが楽になると思います。
ここ数年、僕は娘の絵子と山に登る機会が多かったです。
これは、貴重な時間だと思っています。ふたりで山を歩く、テントで過ごす、それはとても濃い時間です。
普段、子どもは親になかなか言えないこともあるんです。それが、一緒に山に登るようになると、学校であった楽しいことも、辛かったことも、話してくれるようになりました。
そして僕も、娘に悩みを打ち明けるようになったんです。すると絵子は、「パパ、こうした方がいいよ」なんてアドバイスもくれるんですよ。
親と子の関係だけでなく、山の仲間になったような気分です。お互いをさらけ出せるようになりました。
皆さんもぜひ、家族と、親しい人と山に登って、いい時間を過ごしてください。きっと、連携ができ、いい関係が築け、この窮地を皆で乗り越えていこうと思えるはずです。
こんな時だからこそ、人と人との繋がりを大切に思い、互いへの思いやりを失いたくありません。
山に戻るとき、山に登るとき、「withコロナで山に登るときに気を配りたいこと」を描いたこのポスターが、役に立つと思います。
野口健さん
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