祭ばやしが聞こえる 最終回
vol. 60 2022-06-26 0
"映画『おれらの多度祭』は終わらない!"
30分を超えますが、今回の東京公開を総括しています。番外編のドキュメンタリーとして、お聴きになりたい方はどうぞ。(こちらにすべての回をまとめています)
以下は、東京新宿K's cinemaでの公開時の様子です。
自分が監督する映画が映画館で上映されるこの静かな興奮は、三本目でも薄れないし、作り続ける限り慣れることはないだろう。
劇場のスタッフさん達が、これまでに世に出た今作のパブリシティを手作業で掲示してくださるのだが、その前でパンフレットを手に一枚。
5/28(土)初日のトークゲストは写真家のヤン・スンウーさん。間接的なご縁はあったのだが、土門拳賞受賞のヤンさんご招聘は手伝ってくれていたUさんの発案。ドキュメンタリーという共通項を背景に、老獪なヤンさんにズバズバ斬り込んだつもりだったが、劇場スタッフさんからは「監督もうちょっと喋ったほうがいいよ」とアドバイスいただいた。難しいもんです。
5/29(日)のトークゲストは、三重県桑名市多度町出身で、今作の出演者(多度祭従事者)の加藤雅成さん。現在加藤さんは、東京でテレビ番組のADをしている(なんと同じ制作会社に僕の大学の一年後輩がディレクターとして働いていた)。映画の中では子どもっぽい雰囲気なのだが、撮影はもう3〜4年前になるのだ、すっかり大人っぽくなっていた。加藤さんは、映画館で多度祭の映画が上映される、ということに、リアリティーを感じてなかったようで、深めの二日酔いで現れた(そこには、多度祭を映画になんて軽々しく考えるなよ…という祭への誇りや愛情ゆえの感情もあったんじゃないだろうか)。が、劇場で映画『おれらの多度祭』を観てもらい、上映後に登壇してくれた際には、祭の顔になっていたように思う。ありがとう。
平日も上映後に10〜15分くらいなら時間を設けられるとのことで、一人で連日喋りに行った。一日だけパートナーとの対話形式で登壇したが、パートナー曰く「下手な喋りでも、監督が一人で一生懸命喋ったほうが、お客さんには何かが伝わるんじゃない?その証拠に、今日はいつもよりパンフレットが売れてないでしょう」と。なので対話形式は一日でやめにした(確かにその方がパンフレットがよく売れた)。
ちなみにK's cinemaさん、「毎日でも喋りに来ていいよ。お客さんの生の声も聞きたいだろうし」と言ってくださったのでお言葉に甘えたが、そんな映画館は僕の経験では珍しいのだが、どうだろう?あまり来られてもイベントとしての価値が下がるし、気も遣わないといけないからちょっとね…というのが多くの劇場ではないだろうか。劇場の個性の違いがおもしろく、味わい深い。
6/4(土)のトークゲストはコトノハ代表・編集者の針谷周作さん。ご自身の出身地である東京都大田区で、地域性を大切にした編集・出版活動を続けておられ、前作『人情噺の福団治』もコトノハさん出版の「街の手帖」に当時、取り上げていただいた。「三重県の多度町」という"地域"の祭の映画の監督と、「東京都大田区」という"地域"を拠点に活動されている針谷さんとで、ユニークな話をさせていただけたと思う。針谷さんには大田区の「たこ焼 笛吹」という店にも連れてっていただいた。お酒と、うまいたこ焼と、人がいる良き店だった。
6/5(日)のトークゲストは、シネマユニットガス代表・AV監督の、たかつきあきらさん。社会人なりたての時期にたかつきさんの事務所にお世話になり、自分の甘さゆえに試用期間の三ヶ月しか続かなかったのだが、(生意気申せば)「この人はいい加減な仕事をされていない。しっかり人間と向き合って仕事をされているのでは」との未熟ながらも当時感じた印象は、今に至るも変わらず、この日お話させていただき確信に変わった。当時叱られたことなども思い出し、一番緊張したトークゲストがたかつきさんでした。当時はすみませんでした、そしてありがとうございました。
K's cinemaから徒歩1分の場所にある、創業100年を超える長野屋。肉豆腐が絶品でした。
2014年の『まちや紳士録』@シアター・イメージフォーラム、2017年の『人情噺の福団治』@アップリンク渋谷、そして今回の『おれらの多度祭』。"自作を前売り券を使い劇場で観る"というルーティーンは継続中です。そして、本当に普遍性を持った熱い映画だなと再確認。
今作のチラシにコメントを寄せてくださっている、SKIMO(山岳スキー)の小寺教夫選手が映画を観に来てくださいました。スポンサーに挨拶するために東京に来られた合間の時間に来てくれたそう。今年の日本選手権3位で、来年の世界選手権、ひいてはSKIMOが競技として正式に選ばれる2026年のミラノ冬季オリンピックを視野に入れて頑張っておられます。小寺選手とは久しぶりにお酒もご一緒しました。
お酒といえば、世田谷の部屋に作った神棚に三重県から持参した『上げ馬』を供えていたのですが、我慢できず6月に入ったあたりで開けてしまいました。
以上、終わりです。
でも映画『おれらの多度祭』は終わらない!
まだまだ続いていきます。
引き続き、よろしくお願いします。