リターンご紹介 その4
vol. 17 2021-11-17 0
今回は、パンフレットをご紹介します。
私自身、小さい頃から映画館に通う中で、当たり前のようにパンフレットを買ってきました。
実家には、私が映画館に熱心に通っていた時期(主に80年代後半〜90年代)の映画のパンフレットがたくさん本棚に並んでいます(自分にとって印象深い作品のパンフレットは現在の住まいに持ってきていますが)。
アメリカでは、映画館で観客が記念に買うような商品としてのパンフレットは存在しないと聞いたことがありますが、日本の映画好きとしてはやはり、パンフレットは大切なポイントであり、こだわりたいところです。
(写真は仮になります)
さて、映画『おれらの多度祭』のパンフレットです。実は、コロナ禍ではありますが、可能な範囲で動いて、少しずつ、仕込んできていました。
まずは、資料です。
実は、多度祭に関する資料は、驚くほど残っていないのです。
「多度祭について書かれたものって、ないのですか?」
と町の人に質問すると、その人によって違った答えが返ってくる、という状況でした。
結局、私が(コピーで)読むことができたのは、多度町の郷土史家の方々が書かれた二冊の自費出版本です。
(著者はどちらも故人で、お一方のご親族はもう町内には住んでおられないとのことでした)
他にもう一冊、町内の別の方が書いた資料がある…と聞きましたが、出会うことはできませんでした。
多度祭の上げ馬神事には、町内の6地区が馬を出して参加するのですが、幹となる部分のしきたりは同じでも、各地区ごとに違う、細かな手順・しきたりがあって、それぞれの地区は自分達のところのしきたりを守ることに専念しており、おしなべて他地区のことをあまり知らない、ということも、撮影していく中で見えてきました。
私は小山地区を中心に取材・撮影させていただいてきたので、小山地区の方々から情報をいただくことが多かったですが、他地区には、まだ知られていない資料が存在しているのかもしれません。
ただ、どうか
「伊藤、それじゃ取材不足だよ、他地区も取材しないと、怠慢だよ!」
とは言わないでください。
多度町は、人口約一万人の小さな町ですが、それぞれの地区にその地区固有の文化が根強く残っており、それゆえ、人間関係も濃密です。町内に小さな国がいくつもある、と思っていただいて良いでしょう。
要は、『おれらの多度祭』のような映画が、きちんと作れば6地区分、6本できてしまう、ということです。
それくらい多度町は、本質的に豊かな町だったのです。
小山地区出身の私は、祭に参加しないまま18歳で町を出てしまったので、2016〜2019の間、カメラを持って小山地区や小山地区の方々と向き合わせていただくだけで、精一杯でした。
(とても豊かな時間・経験でした)
話が長くなってしまいました(汗)
何が言いたかったかというと、許可をいただき、残っている多度祭の資料の一冊『祭典神事と神話伝説』を、パンフレットに部分的に採録させていただけることになったのです。
ここまで述べてきたような理由で、残っている資料の全貌がはっきりしない中、今作のパンフレットも、やがては資料としての一冊になっていくことでしょう。
その責任を自覚しながら、進めて参ります。
資料にばっかり紙幅を割いてしまいましたが(汗)
他には、小山地区の幹部の方々による座談会で「小山地区の多度祭の現在」を語っていただいたり(収録済み)、多度祭を題材に書かれた児童文学を取り上げさせていただいたり…。
どうぞ、お楽しみに!
2021/11/17
監督 伊藤有紀