「曙光」監督日記 (坂口香津美)3
vol. 11 2016-01-19 0
何とも、つらい時代である。死にたいと、一度でも思ったことのない人間なんてこの世界にいるだろうか。死はつねに私たちの隣人で、身近に存在していてつねに弱い心につけこんで袖を引こうと虎視眈々とねらっている。この国は、年間3万人前後が自殺する、世界に冠たる自殺大国なのだ。私自身、自殺をテーマにした映画を作ることは長年の悲願だった。自殺をめぐる個人的な過去の体験が長年、トラウマとなっていることもあるが、それより現状を知るにつけ、今こそ作らなければ、との思いの方が強い。自殺を口にし続けた老母が自殺を口にしなくなるまで4年間、撮影した映像をドキュメンタリー映画「抱擁」を製作したことで、死や生きる意味を自らに問い続けて来たことも大きい。
今月1月29日(金)締め切りで、Motion Gallery(モーション・ギャラリー)にてクラウド・ファンディングにより製作費の一部への寄金をお願いしている映画「曙光」は、私の7作目の劇映画で、自殺志願者を保護する活動をしている女性の物語である。
https://motion-gallery.net/projects/shokou
死を思うのは弱いからではなく、生きようとする強い思いが何かの拍子に心の奥底に追いやられてしまうから。人間は強い心と弱い心の間を、波のように揺れ動く存在なのだ。生きている限り。弱い心に、差しのべられる言葉や触れあう手の存在があれば、もう一度、人は生き直すことができる。
そんな物語を今、準備中です。
応援、よろしくお願いいたします。
坂口香津美