「とびしま海道 – 瀬戸内のホッピングアイランド」
vol. 13 2025-03-07 0
本日のテーマ:「とびしま海道 – 瀬戸内のホッピングアイランド」
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◆ しまなみ海道とは違う「とびしま海道」の特徴
瀬戸内海には二つの大きな島巡りのルートがあります。
ひとつは全国的に有名な 「しまなみ海道」、そしてもうひとつが 「とびしま海道」 です。
しまなみ海道は、広域的なアクセスとサイクリングロードの整備が進んでいることで、スピード感のある移動が可能なルートです。
しかし、その分「通過する道」になりがちで、観光客が各島に滞在する機会は限られています。
一方で 「とびしま海道」 は、各島の陸地を長く走る構造になっており、「島そのものの個性を感じながら巡る」という点で大きく異なります。
橋でつながる島々を、まるで飛び石を渡るように移動するこのルートは、単なる移動手段ではなく、「ホッピングアイランド」 のような楽しみ方ができる場所です。
この特性こそが、とびしま海道の最大の魅力だと思っています。
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◆ とびしま海道が生み出す「風景のリズム感」
とびしま海道を走ると、島ごとに異なる風景が次々と現れます。
その変化のリズムが、まるで「島々を飛び越えながら冒険している」ような感覚を生み出し、ドライブやツーリングの楽しさを格段に引き上げている のです。
特に秋のとびしま海道は圧巻です。
沿岸部には柑橘畑が広がり、山肌にオレンジ色の果実が連なる風景は、瀬戸内らしい美しさを際立たせています。
標高の高い場所からは、柑橘畑と海の青が混ざり合う景色が広がり、四季折々の表情を見せる。
また、「開けた沿岸道路」 が多いのもこのルートの特徴です。
しまなみ海道のように、橋を渡る際に壮大な景色を楽しむことができますが、とびしま海道では陸路を走りながらも常に海を眺めることができます。
また、採石場や漁港 などの産業エリアが島々に点在し、無骨な人工物と穏やかな自然が共存する風景も、瀬戸内の持つ独特の魅力を象徴しているように思います。
このように、「次の島ではどんな景色が広がっているのか?」 というワクワク感を持ちながら旅ができるのが、とびしま海道の最大の魅力です。
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◆ 御手洗の町並みと、潮待ちの文化
とびしま海道を巡ると、かつての 「潮待ち文化」 の名残を随所に感じることができます。
その代表例が、大崎下島にある 御手洗(みたらい)地区 です。
御手洗は江戸時代に瀬戸内海の潮待ちの港町として栄えました。
潮待ちとは、海の満ち引きや潮の流れを見極め、航行に適したタイミングを待つこと。
この地で船乗りたちが宿を取り、商人が交流し、文化が発展した結果、今でも当時の町並みが残り、貴重な歴史的景観を形成しています。
「時間を待つことが価値になる」
こうした文化が根付いていた御手洗の町並みは、まさに 「瀬戸内ならではの時間の流れ」を感じさせる場所です。
この潮待ち文化が生んだ独特の風景を、より多くの人に体験してもらえれば、瀬戸内の歴史的な魅力をより深く理解できるのではないかと思います。
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◆ 人口減少と高齢化が進む島々
とびしま海道の島々は、風光明媚な景観や歴史ある町並みを持つ一方で、人口減少と高齢化が顕著な地域でもあります。
私は大学院時代、瀬戸内海にある人口1000人以上の島々の調査 を行いましたが、とびしま海道の島々はその中でも特に高齢化率が高く、人口減少の進行が早いエリアでした。
産業構造としても、一次産業従事者の割合が格段に高く、食の基盤となっている地域であることは間違い無いのですが、やはり就農・就漁離れの煽りを受け、人口構造にも影響してしまっているように感じます。
この地の過疎化が進むことは、島に残る文化や風景を維持することが難しくなると共に、一次産業人口がより減少していくという事実があります。
こうした状況のなかで、どうすれば 「ただ衰退していく島」 ではなく、「持続可能な形で次世代につなげる島」 にできるのか。
とびしま海道の美しい風景や文化を守るためには、観光だけでなく、新たな関わり方を模索することが重要なのではないかと感じています。
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◆ 「ホッピングアイランド」としての未来
とびしま海道の観光資源は、まだ十分に活かされているとは言えないと、僕は思います。
各島が持つポテンシャルは高いものの、それらをつなぐ観光戦略や、各地域が連携したブランディングが課題となっています。
また、しまなみ海道と比較すると、寄れる飲食店や滞在スポットが限られているため、長時間の観光には向いていないという現状もあります。
しかし、だからこそ、 「点ではなく、線でつなぐ観光」 を考えることで、このルートの可能性は大きく広がるはずです。
観光客がただ通り過ぎるのではなく、「ホッピング」するように各島を巡る楽しみ方を提案できれば、瀬戸内の新たな観光の形が見えてきてくれるのではないでしょうか。
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◆ 現在の進捗
・支援金額:571,000円(57%達成)
・支援者数:48人
・終了まであと19日
このクラウドファンディングが、「田舎との関わり方の選択肢」を広げるきっかけになれば嬉しいです。
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◆ まとめ
とびしま海道は、単なる移動手段ではなく、「旅そのものが楽しい道」 です。
各島の個性を感じながら巡ることができるこのルートには、まだまだ活かしきれていない魅力が眠っています。
しかし、同時に人口減少や高齢化が進んでいる現実もあり、未来へとつなげるための取り組みが求められています。
だからこそ、観光の視点を変え、「ホッピングアイランド」 としての可能性を引き出していくことが、この地域の未来を考えるうえで重要なのではないかと思います。